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・本記事から得られるもの、理解できる事
〇「反り腰(下位交差性症候群)」について理解できる

〇「反り腰」に対しての運動が理解できる

それでは始めていきましょう!

こんにちは、Basisの新田です。

 今回は反り腰(下位交差性症候群)に対しての運動について、皆様に少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。今回も論文を参考にしながら解説していきたいと思います。まず、はじめに「~下位交差性症候群に対して~ピラティスは効果的?」という記事において、反り腰の特徴的な筋力低下・緊張しやすい筋肉は解説されているため、そちらの記事を見て頂いた上で、こちらの記事は読み進めると理解が進みやすいと思います。
それではさっそく反り腰についての復習を簡単にしていきます。まずは硬く、緊張しやすい筋肉:脊柱起立筋・腰方形筋・腸腰筋・恥骨筋・大腿筋膜張筋・大腿直筋、外側広筋(大腿四頭筋の一部)などが代表的です。そして、弱化しやすい筋肉:腹筋群(腹斜筋群、腹横筋)・大殿筋・股関節外旋筋群・ハムストリングス・大内転筋などが挙げられます。
上記のような筋肉が硬くなることで腰椎伸展位+骨盤前傾位で固定されてしまい、それに伴った肋骨外旋位(オープンシザースシンドローム)というような姿勢を示すことが多くなります。このような姿勢を取り続けてしまうと、呼吸機能の70~80%を担うと言われている横隔膜機能の低下につながってしまいます。簡単に横隔膜の機能を解説していくと、吸息時は肋骨外旋に伴って横隔膜が下方へ引き下がることで肺が拡張します。呼息時は肋骨内旋に伴って横隔膜が上方へ引き上がることで肺が収縮します。
つまり肋骨が外旋位で固定されてしまうと、最初から横隔膜が引き下がった位置になり自然な吸息がしにくい環境となってしまいます。そしてそれを代償するために、呼吸補助筋である斜角筋や胸鎖乳突筋が過剰な反応を生じることが考えられます。それによって、首こりや肩こりを引き起こす可能性も高くなってしまうということです。こちらに関しては、後ほど紹介する論文からも推測できる部分があるので、そちらで詳細に解説していこうと思います。
そして横隔膜の特徴として、筋紡錘という筋の長さや収縮の速さを感知するセンサーが非常に少ないという特徴があります。逆に言えば反り腰の傾向があるということは、ただでさえセンサーが少ない筋肉がさらに反応しにくい状態となってしまい、改善しようと思っても時間がかかってしまうということが考えられます。
それでは論文を中心に反り腰に対して効果的な運動を考察していこうと思います。1つの論文では28人の成人女性を対象に、ピラティス呼吸法が体幹筋の活性化に及ぼす影響を調査していました。ピラティス呼吸法としてカールアップ、チェストヘッドリフトを実行している最中に測定は実施され、ピラティス呼吸トレーニングは1セッションあたり60分間、2週間にわたって3回/週の頻度で行われました。
結果としてピラティス呼吸法を実施すると、腹横筋/内腹斜筋および多裂筋の全ての活動が有意に増加し、呼吸筋と体幹筋を改善する可能性が示唆されています。別の記事である「腰痛について」でもピラティストレーニングでの有用性を説明していますが、呼吸の改善にも効果があるということが分かりますね。


図1.カールアップの一例


図2.チェストヘッドリフトの一例

そして別の論文では慢性的かつ持続的な口呼吸(oral breathing:OB)と姿勢の変化が関連するかどうかを調べています。8歳~11歳のOBおよびNB(nasal breathing:鼻呼吸)の小児107名を対象とした研究にはなりますが、参加者の姿勢評価、最大吸気圧、最大呼気圧、6分間歩行テストを実施しています。
結果として異常な頸部姿勢と呼吸パターンには関連が見られ、対象107名のうちOBは45名、NBは62名いましたがその中でもOB36名(80%)とNB30名(48%)が異常な頭部姿勢を示し、平均の最大吸気圧と最大呼気圧つまり呼吸筋の強度の低下もOBが有意に低いという結果が見られていました。つまり口呼吸でいると横隔膜などの呼吸筋の反応が悪くなる→呼吸補助筋の活動を高めて代償する→それに伴って頸部の位置関係も悪くなる→肩こりや首こりも起こしやすくなるといった負の連鎖が生じることも理解できますね。
最後にもう1つ論文を紹介します。こちらの論文は姿勢の変化が筋活動にどのような影響を与えるかを調べた論文になります。健常成人17名を対象に中立、猫背、前彎の3姿勢をとった際の体幹と股関節の筋活動を比較しています。結果として、猫背姿勢では体幹と股関節のインナーマッスルの活動が低下し、前彎姿勢では体幹背部の筋活動のみ増加したという結果でした。つまり、反り腰になると体幹背部は過活動の状態となりその姿勢を改善しようと思っても、横隔膜と肋骨の位置変化も絡んでくるため改善には時間がかかるということが論文からも推測されます。


図3.左から中立・猫背・前彎(反り腰)姿勢

ここまで3つの論文を紹介させて頂きましたが、反り腰に対して効果的な運動をまとめていきましょう。①ピラティスエクササイズの中でも、カールアップ・チェストヘッドリフトが効果的②口呼吸→鼻呼吸へ意識的に変更することが論文から推測される効果的な運動になります。ここにもう1つ、当施設で実施している反り腰に効果的な運動を紹介させて頂こうと思います。
 チェストヘッドリフトは効果的な運動の1つですが、その状態から更に捻りを加えた運動にすることで内腹斜筋を強力に刺激する運動となります(オブリークカールアップ)。もちろん直線的な運動と比較すると難易度が上がるため、刺激が狙った部位に入っているかどうかを確認しながら実施する必要はありますが、代償動作による腰痛などが無ければぜひ自宅でも試してみて欲しい運動の1つになります。


図4.オブリークカールアップの一例

 いかがでしたでしょうか。今回は反り腰に対しての運動について書かせて頂きました。姿勢を変化させる・痛みを抑えるというどちらの目的においても、運動が重要であるということが今回の記事を通して理解する手助けになれば幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。

 Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

参考引用文献
1)Sung Tae Kim, Joon Hee Lee.: The effects of Pilates breathing trainings on trunk muscle activation in healthy female subjects: a prospective study.: J Phys Ther Sci.: 2017 Feb;29(2).
2)Renata Tiemi Okuro Andre Moreno Morcillo et al.: Exercise capacity,respiratory mechanics and posture in mouth breathers.: Brazilian Journal of Otorhinolaryngology.: 2011 Sep-Oct;77(5).
3)Ryo Fujitani, Takumi Jiromaru et al.: Effect of standing postural deviations on trunk and hip muscle activity.: J Phys Ther Sci.: 2017 Jul;29(7).