・本記事から得られるもの、理解できる事
「身体を整えて」から「動く」ことで「コンディショング、ライブパフォーマンス」を高め、快適な毎日を過ごせるように、セッションをご提供しています。
〇「膝痛」の種類が理解できる
〇「膝痛」を緩和する方法が分かる
〇「膝痛」を予防する方法が分かる
それでは、さっそく解説していきます!
こんにちは、Basisの新田です。
今回は前回の腰痛に続き膝の痛みに関して、皆様に少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。今回も論文やデータを読み込んで私自身が改めて勉強になった部分もありましたので、そこも共有できるように書いていきたいと思います。
膝の痛みは厚生労働省の発表によると、60歳以上の膝痛を患っている人数は約3000万人と推定されており、これは日本人の全人口の4人に1人にあたります。また、60代、70代では2人に1人が膝の痛みを抱えているという調査結果があります。「私はまだそんな歳じゃないから大丈夫」とこの記事を読んでいる人たちに向けて、まだ続きがあります。なんとこの調査結果では40代でも約4割の人が日常生活で膝の痛みを感じているという調査結果も出ていました。
個人的にはこの「日常生活」においても膝の痛みがあるという所に目を引かれてしまいました。つまり裏を返すと、40代の人が5人集まるとその中の2人は趣味など日常生活以外の時間にも膝の痛みを感じて過ごしていると考えられます。また、ある会社の独自調査によると40%の方が「膝に痛みを感じる」もしくは「感じたことがある」と回答しているにも関わらず、「通院している」と回答したのは3.2%というデータが示されており、私は衝撃を受けました。そして、極め付きに4.7%の方は「過去に通院していたが、通院を止めた」というデータまで示されていて、「痛みが取れない」「治らない」といった理由から治療をあきらめている人が一定数いるというのが見て取れます。
図1.セルソース株式会社の調査データを元にグラフを一部改変
さらにこの独自調査で気になったのは、「通院している」と回答した人に「現在の治療に満足しているか」を尋ねたところ、61.5%が「満足していない」と回答し、「満足している」と回答したのは38.5%であったということにも驚きました。また、「満足していない」と回答された人の理由は、72.8%の人が「痛みが取れないから」、51.6%の人が「完治する見込みがないから」と回答されたデータが示されていました。
図2.セルソース株式会社の調査データを元に図を一部改変
以上を簡単にまとめると、①痛みがあり通院しているが治療に満足していない人が60%以上いる②そして、その理由のほとんどが「痛みが取れない」「完治する見込みがない」という悩みや不安を見て取れるデータとなっていました。
ここでもう1つ、厚生労働省から2019年に発表されている平均寿命と健康寿命の推移を見てみましょう。日本人の平均寿命は男性で81.41歳、健康寿命は72.68歳(8.73歳の差)、女性では87.45歳、健康寿命は75.38歳(12.07歳の差)となっています。
図3.平均寿命と健康寿命の推移
この平均寿命と健康寿命の乖離は私が理学療法士になったときから問題視されていましたが、現在まで乖離に大きな変化が無いまま経過しています。そして、この乖離に関係していると当時から叫ばれていたのは、変形性膝関節症などの関節症です。
変形性関節症という言葉はこの記事を読んでいる皆さんも1度は聞いたことがあるかと思います。変形性関節症の定義はアメリカリウマチ学会診断・治療基準委員会によると「関節軟骨の欠損的整合性に関連した関節症状や兆候へと導く状態の混成グループであり、付け加えて関節周囲の下層の骨の関連した変化である」と述べられています。
これらをかみ砕いて捉えると関節軟骨の変化だけでなく、関節周囲の組織を含む変化と言えます。まず膝関節を構成するのは、「骨・関節軟骨」「関節包・滑膜・滑液包」「半月板」「靭帯」「筋・腱」「脂肪体」「神経」などなど構成要素がとても多いです。そしてこれらの組織が加齢をはじめとした要因で変性し膝関節の安定性が失われ、関節姴隙(関節のすきま)が狭くなり骨棘(骨のトゲ)が形成されると変形性膝関節症という状態に至り、膝痛の原因になるということです。
当施設にも「病院で変形性膝関節症と診断されました」という方はいらっしゃいますが、私が現場で対応させて頂くときには問診を通じて(1)関節の内部で痛みが出ている可能性が高いもの(2)関節の外部で痛みが出ている可能性が高いものの2つのケースに分けて考えています。
関節の内部で痛みが出ているものは、前回の腰痛についてでも取り上げた急性(突然、痛くなった)のケースが多くなると感じています。特に膝の痛みでは、はっきりした受傷機転(例えば、階段を踏み外したなどの大きいストレス)がある場合は「骨・関節軟骨」「滑膜」などの組織が関係した炎症を起こしていることもあり、炎症が収束するためには時間をかける必要があるため、痛みの軽減には時間のかかるケースも多くなります。
しかし、腰痛と違って膝痛では「運動を控えましょう」という対応ではなく、痛みなく動かせる部分を中心に運動する。特に膝関節にかかるストレスを減らすため体幹(主に上半身)の使い方を見直すことが、今後の膝痛を予防するためには重要です。
そして関節外部の痛みには「筋・腱」「脂肪体」「神経」などが関係しているケースが多いと感じています。もちろん関節外部でも急性の要素は含まれるのですが、セッションの中で最初にあった痛みが徐々に軽減していくといった経験を私自身が何度もしているため、慢性的な要素(例えば、筋肉の伸び縮みが上手くできないことで痛みが出ているなど)の方が多い実感があります。この関節外部かつ慢性的な痛みを疑うケースでは、運動における重要性はさらに高まります。
前回の腰痛についてでは説明しきれていませんでしたが、ピラティスには痛み、運動恐怖症(身体を動かすことが怖い)に対する有効性が研究で明らかになっています。参考にさせて頂いた論文では、ピラティスを6週間継続した段階から効果が発揮されはじめ12週間(3ヶ月)継続すると著明に痛みと運動恐怖の軽減が図れたとされています。また別の論文では、両膝の変形性膝関節症を発症している方44人を、ピラティス運動を受けるグループ・アイソメトリック運動を受けるグループの2つに分けて1時間のセッションを3回/週、8週間(約2ヶ月)実施した結果、ピラティス運動を実施されたグループの方が痛み・可動域・身体機能に有意な改善が得られたと示されていました。
ここまで難しい話が続いてしまったので、軽くまとめさせていただくと①膝の痛みは日常生活~趣味活動にも支障をきたす②治療を受けている人が少なく、治療していても満足していない③ピラティスは痛みと運動恐怖を軽減する④データは少ないが、ピラティス運動は変形性膝関節症の治療にも効果的な可能性があるということが分かります。
私の経験談になりますが、当施設を利用されている方から膝の痛みに関しての不安をぶつけられました。「膝が痛くて歩く気が起きない・・・」「数ヶ月、通っているけどあんまり変化がないねー・・・」など耳の痛い言葉でしたが、その度に自分の持っている知識・技術を総動員して対応させていただき、この記事を書かせて頂いている直近のセッション時には、「30分ぐらいの散歩をしても痛くなかったよー」と嬉しい言葉が聞かれ、私自身も諦めなくて良かったということと、少しでも今回の記事で取り上げたような悩み・不安を解消できるように今後も努力し続けようと思っています。
今回もかなりのボリュームになってしまいましたが、ここまで読んだ頂いた皆様の膝痛を少しでも軽減する参考になれば幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。
〜Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田
参考・引用文献
1)セルソース株式会社調べ:prtimes.jp/main/html/rd/p/000000065.000024685.html.
2)厚生労働省のホームページ:mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/21/backdata/01-02-01-01.html
3)40代から70代の男女6000人に聞いた人生100年時代におけるシニアの健康に関する意識と実態調査結果概要:オムロン ヘルスケア株式会社:2019年9月9日
4)Nadia Saleem, Saima Zahid et al.: Effect of Pilates based exercises on symptomatic knee osteoarthritis: A Randomized Controlled Trial.: J Pak Med Assoc.: 2022 Jan;72(1).
5) David Cruz-Diaz, Marta Romeu, et al: The effectiveness of 12 weeks of Pilates intervention on disability, pain and kinesiophobia in patients with chronic low back pain: a randomized controlled trial.: Clin Rehabil.: 2018 Sep;32(9).
6)Y.Y. Leung, J.L. Huebner et al: Synovial fluid pro-inflammatory profile differs according to the characteristics of knee pain.: FULL LENGTH ARTICLE.: Volume 25, Issue9.
7)Russka Shumnalieva, Georgi Kotov et al.: Pathogenic Mechanisms and Therapeutic Approaches in Obesity-Related Knee Osteoarthritis.: Biomedicines.: 2023 Dec20;12(1).
8)Russka Shumnalieva, Georgi Kotov et al.: Obesity-Related Knee Osteoarthritis-Current Concepts.: Life(Basel).: 2023 Jul28;13(8).