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・本記事から得られるもの、理解できる事
〇「変形性膝関節症に効果的な運動」が理解できる

〇「変形性膝関節症」を予防する方法が分かる

それでは、さっそく解説していきます!

こんにちは、Basisの新田です。

 今回は変形性膝関節症に有効な運動という名目で膝関節に対して有効な運動と、変形性膝関節症を予防するためにはどうすれば良いかと言うことをなるべく皆様に分かりやすく伝えていきたいと思います。今回の記事も私自身の経験則が多分に含まれた内容となりますが、現場を通して効果的だった運動を論文に基づいて解説していけたらと思います。

 それでは、はじめに変形性膝関節症の定義について簡単に復習していきましょう。まず膝関節を構成しているのは、「骨・関節軟骨」「関節包・滑膜・滑液包」「半月板」「靭帯」「筋・腱」「脂肪体」「神経」などで構成されています。このような構成要素がアメリカリウマチ学会の診断・治療基準委員会による「関節軟骨の欠損的整合性に関連した関節症状や兆候へと導く状態の混成グループであり、付け加えて関節周囲の下層の骨の関連した変化である」と言われています。

図1.変形性膝関節症のイメージ

上記の表現は非常に難しいため私なりにかみ砕いた表現をさせて頂くとすれば、上記の膝関節を構成する要素のいずれかに、何かしらの変形や関節症状・兆候を引き起こした状態であると考えてください。ここまでが変形性膝関節症の復習になりますが、次からは変形性膝関節に効果的な運動と予防に繋がる考え方を解説していきたいと思います。
それでは変形性膝関節症を含めた関節症で生じやすい、関節の痛みを軽減するための運動を3つ紹介していこうと思います。前提として、これから紹介するエクササイズは膝の痛みが強くない方向けに紹介させて頂きます。そのため、この記事を読んでいる方で膝が痛くて日常生活にも困っているレベルの方は無理して実施せず、病院で診察を受けたり当施設で相談したりしてから試してみてください。
まず1つ目はシングルレッグストンプというエクササイズになります。こちらの運動は股関節~膝関節~足部が連動して膝関節に負担が無い動作を遂行出来るかどうかを確認するエクササイズになります。この運動における要素を分解していくと、まず大事なのは膝関節の屈曲角度です。現場では膝関節に痛みがあるにも関わらず、膝だけで動作を遂行してしまう方が非常に多いです。例えば、右図にあるような動作終了時に膝が内側に入ってしまうエラーが散見されます。
この場合は膝関節を支持する、大腿四頭筋やハムストリングスの筋力・反応性低下などがエラーの原因となります。そしてもう1つ大事になるのは、連動するべき股関節の大殿筋・中殿筋の筋力・反応性低下も考えられます。股関節の筋群は殿筋膜~大腿筋膜~膝関節というように形を変えながら、膝関節まで繋がっています。そのため、膝の安定性を改善するために膝関節を鍛えるのはもちろん重要なのですが、膝関節の上にある股関節や下にある足関節の安定性を改善することも、大事な考え方となります。


図2.シングルレッグストンプ(左図:成功例 右図:膝が内側に入るエラー例)

 2つ目はバックレッグスタビリティというエクササイズになります。こちらの運動も1つ目の運動と同様に股関節~膝関節~足部を連動させ、下肢全体で荷重を支える方法を学習していくために使います。この運動における要素を分解すると、名前の通りですが後ろ側の下肢で荷重を支えられるかが重要です。画像では分かりにくい部分ですが、この時の荷重は前足-1~2に対して、後ろ足-9~8ぐらいの比重になります。
 後ろ足で安定して荷重を支えられるからこそ、前足にあるボールを無理なく転がすというタスクを行うことができるということです。立位でやるのが難しい場合は右図にあるように膝を着いて行えば、足部を抜いた股関節~膝関節の安定性を向上する目的の運動に出来るため、不安な方は膝を着いた状態での運動から実施してみてください。



図3.バックレッグスタビリティ(右図:膝を着いて負荷量を調節した場合)

 3つ目はフロッグというエクササイズになります。こちらの運動は股関節~膝関節の内側(股関節内転筋群、四頭筋群)を重点的に鍛える種目になります。膝関節を安定させるためには、股関節~膝関節の連動が重要であるということをここまで説明してきましたが、立位のエクササイズでは動作が不安定になる方もいらっしゃいます。その場合は非荷重位から鍛えていく必要があり、その時にはオススメの運動となります。
 この運動における要素を分解していくと、腰が反らないように骨盤をコントロールする+踵を押し付けながら膝を伸ばしていくことで、股関節~膝関節の筋群を刺激することで股関節・膝関節の安定性を向上させることが可能になります。このエクササイズでは、骨盤を含めた股関節のコントロールに影響する腹筋群・脊柱起立筋群も刺激することが出来ます。自宅で行う場合は、床に仰向けになって図と同じような形で足を遠くに伸ばすように意識してみましょう。


図4 フロッグ(リフォーマー)
そして最後に2つ論文を紹介させて頂きます。変形性膝関節症の痛みに対する薬物療法と運動療法の有効性を比較した論文になります。この論文によると、運動療法と薬物療法を比較したところ、薬物の違いによる治療効果は有意な差が見られなかったが運動療法と薬物療法の比較では有意な差を示したと記載されています。このことから、運動療法は変形性膝関節症の痛みに対する最良の治療法であると結論付けられていました。
 もう1つは健康な若年者を中心に検討された論文になりますが、有酸素運動における運動誘発性痛覚低下(EIH:Exercise-Induced Hypoalgesia)の影響を調べた論文になります。このEIHというのは1回の運動で、痛覚感受性が低下するという現象の事です。(痛みの刺激が5を超えると痛みを感じる→痛みの刺激が7を超えると痛く感じる状態に変化すると言ったイメージです)
 この論文はEIHを効果的に得られるのは、どの程度の運動強度なのかを調べた論文で73人の健康な若年成人に対して、それぞれ30%・50%・70%の心拍数予備能(Heart Rate Reserve:ここでは簡単に強度と考えてください)で30分/回で3回実施したところ、低強度~高強度すべての運動で鎮痛反応が得られましたが、低強度<高強度の方が効果的であったと示されていました。
 いかがでしたでしょうか。今回は変形性膝関節症に有効な運動について書かせていただきました。改めて変形性膝関節症には薬物療法よりも運動が効果的であるということが、今回の記事を通して理解できたかと思います。この記事が少しでも変形性膝関節症の症状を緩和する手助けになれば、幸いです。
もちろん痛みが強く運動が実施できない方もいらっしゃるかと思いますので、その場合は当施設では痛みを緩和する手技を行ってから、効果的に運動を行うという対応をしていますので、ぜひお気軽にご相談して下さい。今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
 Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

参考引用文献
1)Sally L Coburn, Kay M Crossley et al: Immediate and Delayed Effects of Joint Loading Activities on Knee and Hip Cartilage: A Systematic Review and Meta-analysis.: Sports Med Open.: 2023 Jul 14;9(1).
2)Jonas Bloch Thorlund, Milena Simic et al: Similar Effects of Exercise Therapy, Nonsteroidal Anti-inflammatory Drugs, and Opioids for Knee Osteoarthritis Pain.: A Systematic Review with Network Meta-analysis.: J Orthop Sports Phys Ther.: 2022 Apr 52;(4).
3)Joseph B Lesnak, Alexis Fahrion et al: Resistance training protects against muscle pain through activation of androgen receptors in male and female mice.: Pain.: 2022 Oct 163;(10).
4)Niwa Y, Shimo K et al: Effects of Exercise-Induced Hypoalgesia at Different Aerobic Exercise Intensities in Healthy Young Adults.: Journal of Pain Research.: 2022 July 29;(15).