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今回は皆様も1度は聞いた事がある五十肩/肩関節周囲炎に効果的な運動について少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。今回も現場での経験や論文を基にしながら、五十肩/肩関節周囲炎の対処法について少しでも理解が深まればと思います。
◯ 五十肩/肩関節周囲炎とは
まず初めに五十肩/肩関節周囲炎について復習していきましょう。以前書かせて頂いた「肩こりについて」や「五十肩/肩関節周囲炎について」という記事において、五十肩/肩関節周囲炎は症候性(何らかの疾患が原因で起こる)疾患であることを解説させて頂きました。
そして五十肩とは、江戸時代に書かれた書物である俚言集覧の中で、「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛む事あり、程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう」と書かれています。簡単にこの言葉を解読すると「人間、50歳にもなれば手や腕の関節が痛むことがある、それでも時間が過ぎれば薬も使わずに治る。これを五十腕と言ったり五十肩と言ったりする」という表現になるかと思います。
◯ 現代における五十肩/肩関節周囲炎
もちろん今でもこの五十肩と言う言葉は医学的に用いられていますが、最近はこの五十肩という大きな枠組みの中に、様々な疾患が含まれているという考え方が現代医学では普及してきています。例えば、五十肩の中でも肩関節周囲炎をはじめとした腱板損傷や上腕二頭筋炎など疾患を細分化して理解する作業が必要だということです。
そして肩関節周囲炎も同様で、五十肩という大きな枠の中に含まれる病名の1つです。つまり、もう少し詳細に区分けして理解しなければいけません。分類に関してはそれぞれの研究団体によっても多少の差があると思われますが、私自身が文献を読んだ中で多かったのは肩関節周囲炎≒癒着性肩関節包炎(肩峰下滑液包炎)や凍結肩に分類されることが多いようです。肩関節周囲炎の特徴的な症状として、関節滑膜の炎症(特発性ではない)と肥厚があることや、肩峰下滑液包の血流が増加していることが特徴となります。
この五十肩/肩関節周囲炎に共通しているのは、どちらの疾患も名前が指す通り40~50代が最もかかりやすい病気であるという点です。特に肩関節周囲炎は特徴的な症状の進み方である、炎症期→拘縮期→回復期という経過を示すとされています。
「炎症期(10週〜9ヶ月)→拘縮期(4〜12ヶ月)→回復期(5ヶ月〜2年)」
図1.肩関節周囲炎の病期(症状の進み方)
最後にもう1つだけ重要な復習をしていきます。論文の報告からになりますが、肩関節周囲炎になりやすい人の特徴についてです。肩関節周囲炎の患者の約35%には脳卒中、糖尿病、心疾患、呼吸・循環器疾患などの既往歴が最低でも1つはあったという報告があります。簡単にまとめると、「普段、デスクワークしかしていない・・・」などの座位時間が長い人や糖尿病などで身体内に炎症を生じやすい方は特に注意が必要となります。
次の項目からは、五十肩/肩関節周囲炎に効果的な運動を3つ紹介していこうと思います。
◯五十肩/肩関節周囲炎に効果的な運動3選
まず1つ目の種目はサイドライイングwithホバーホールドというエクササイズです。こちらの運動は、横向きで肩とお尻に適切に荷重をかけて身体の側面を浮かせる事で肩関節の筋群へストレッチをかけることが可能です。特にこの種目は論文上で肩関節の痛みや可動域の制限に強い関わりがある筋肉として、肩関節後方にある棘下筋や肩甲骨外側部に付着を持つ小円筋が挙げられ、それらの筋肉へのストレッチが効果的に得られるエクササイズとなります。
画像にあるような姿勢が基本姿勢ですが、ここから寝返りをするような形でさらに左肩へ体重をかけていくとストレッチが効果を高めることが出来るため、慣れてきた方は徐々にストレッチを強くかけてみるのもオススメとなります。
図2.サイドライイングwithホバーホールド
2つ目の種目はCKCアイソメトリックショルダープレスというエクササイズです。こちらの運動は見ての通り逆立ちのような姿勢を取ることで、肩甲骨は上方回旋しそれに伴って肩関節も挙上+外旋するという、肩関節の必要な動作が全て詰まったエクササイズです。さらに脊柱自体も床をしっかりと押し込むことで、伸展方向で使用することが可能となります。
注意点としては、左図~右図のように脊柱の特に胸椎部が伸展方向へ入るように体重を後方へ移動することが重要です。この動きが適切に出なければ結局、上半身がつぶれた屈曲位での動作となってしまい、肩関節の筋群にも必要な収縮が得られなくなってしまいます。
そしてこの種目は回数を繰り返すというより、図のような姿勢をキープすることが出来るかが重要ですので目安は、5~10秒保持/回×2回程度が最初はオススメになります。このエクササイズは見た目以上に、肩関節への刺激が高い種目となりますので肩以外にも痛みが出てきた場合は別のエクササイズを試してみてください。
図3.CKCアイソメトリックショルダープレス
最後に3つ目の種目はオンエルボーキャットバック&ツイストwithオブリークキープというエクササイズです。ずいぶんと長い名前になりますが、簡単に言うと図のような形で左の肘と下腿(左の膝から下の部位)で身体を支えて浮かせてみましょうという運動になります。
このエクササイズの目的としては、肩関節周囲筋を安定させる+腹部を介して殿筋群の支持性も向上させるという目的があります。2つ目に紹介したエクササイズでも脊柱と肩関節は関連する部分があると説明しましたが、最終的には脊柱~下肢機能まで関連してくるため、さまざまな姿勢や方向へ上肢を使って安定させることが出来るかが重要となります。
図4.オンエルボーキャットバック&ツイストwithオブリークキープ
<まとめ>
今回は五十肩/肩関節周囲炎に効果的な運動について書かせて頂きました。こちらの運動も私自身が現場で使用して、非常に効果が高いものとなりますのでぜひご自宅でも実践して頂ければと思います。もちろん運動した段階で痛みが強い方は、無理をせず医療機関の受診からオススメしていますが、当店の体験セッションも気軽に利用して頂ければと思います。
体験セッションではこちらの記事で紹介した運動だけでなく、皆様の身体の状態に合わせた運動プログラムを作成・実践していますし、実は運動が難しくて痛みが出ていたという場合もあります。そのような事に気づく1つのきっかけにもなりますので、お気軽に利用してもらえれば幸いです。
今回の記事を通して五十肩/肩関節周囲炎を理解し対処する方法も実践できるようになれば幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。
Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田
参考引用文献
1) Lan Tang, Kang Chen et al: Scapular stabilization exercise based on the type of scapular dyskinesis versus traditional rehabilitation training in the treatment of periarthritis of the shoulder: study protocol for a randomized controlled trial:2021 Trials 22, Article number:713
2) Christopher M Jump, Kathryn Duke et al: Frozen Shoulder A Systematic Review of Cellular, Molecular, and Metabolic Findings: JBJS Reviews: 2021 January 26: Volume 9, Issue1.
3)Sophie Abrassart, Franck Kolo et al:‘Frozen shoulder’ is ill-defined. How can it be described better? : EFORT Open Reviews: 2020 May: Volume 5, Issue5 : 273-279.
4)Cintia Garcilazo, Javier A Cavallasca et al: Shoulder manifestations of diabetes mellitus: Curr Diabetes Reviews: 2010 Sep: Volume 6, Issue 5.
5)渡部 裕之,古田 亮介・他:理学療法超音波学 vol.2:運動と医学の出版社:pp181-188,2024.