「身体を整えて」から「動く」ことで「コンディショング、ライブパフォーマンス」を高め、快適な毎日を過ごせるように、セッション(手技×マシンピラティス)をご提供しています。

・本記事から得られるもの、理解できる事

〇「プルプルの正体」について理解できる

〇「プルプルの改善方法」が理解できる

 

ピラティスをはじめとした運動を実施した際に、皆様も1度はプルプルと震えたことがあるのではないでしょうか。今回の記事では、このプルプルの正体と改善方法について、少しでも分かりやすく伝わるように解説を進めていけたらと思います。私自身、この内容については最近、学びを深めた部分にもなるので「こんな考え方もあるのかー」という理解をして頂ければと思います。今回は一部、論文も参考にしながら解説を進めていこうと思っていますので、内容が盛りだくさんになってしまうかと思いますが、覚悟して読み進めて頂ければ幸いです。

 まず結論として、プルプルを改善するにはピラティスをはじめとした様々な種類・強度の運動が必要ということになります。もちろん記事の中で順を追って解説を進めていきますので、読み終わった時にはプルプルの正体や改善方法の理解が進んでいることと思います。改善方法に関しては、ピラティスの始祖であるジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスさんが提唱したコントロロジーという考え方に通じる部分があると、個人的に解釈している部分もありますので、1つの参考になればと思います。

それでは今回も前置きが長くなってしまいましたが、次の項目からピラティスにおけるプルプルの正体について解説していきたいと思います。

 

<ピラティスをして震える?>

 ではピラティスをした時の震えについて、いくつかの要素を絡めながら解説を進めていきたいと思います。まず皆さんがイメージしやすい運動中の震えというのは、いわゆるトレーニングジムなどにあるマシンを使って、高重量の負荷をかけたスクワットなどが分かりやすいのではないかと思います。この時はしゃがんだ姿勢→立ち上がるなどにおいて、持ち上がるかギリギリを攻めれば攻めるほど、運動中に震えるのが想像できますね。

 それと比較するとピラティスエクササイズ中の震えはどちらかと言えば、低負荷~中等度負荷の運動場面が多いように感じませんか。こちらの方は皆さんもイメージが付きにくいかと思いますので、論文の報告も絡めて筋肉の震えが生じやすい局面を細分化してみましょう。

 そのためには筋肉が収縮~弛緩を行う過程を知らなければなりませんが、こちらに関してはバックナンバーである、「腰痛と栄養ドリンクの関係性について」で筋収縮のメカニズムを解説していますのでそちらを参考にしてください。非常に簡素にまとめると、脳から運動指令が生じる→筋肉が収縮する→運動が終了すると筋肉は弛緩するという順序で反応が起こります。

 ここまでを踏まえて考えると、筋肉の震え(プルプル)は”運動指令の量”というものが非常に大きい要素となります。例えば皆さんの目の前に500mlのペットボトルがあるとします。このペットボトルを持ち上げようとしたとき、勢い余って中の水をこぼすなんてことは、ほとんどの場面で起こらないと思います。これは「500mlのペットボトルを持ち上げる」という動作に対して、適切な量の運動指令を自分たちの身体が選択出来ているため、水をこぼすほどの勢いが付かないということです。

それでは目の前にあるペットボトルが2Lになったとしましょう。それを持ち上げようとすると、500mlのペットボトルを持ち上げる時と同じ力の入れ具合では持ち上がらないのが想像つきますよね。さらに言えば500mlのペットボトルに対して2Lのペットボトルを持ち上げるような力を入れると、中の水が勢いよくこぼれるのではないかと思います。

上記のような現象がピラティスを実施している時にも起きているのです。現場で良く震えがみられるエクササイズとして、フットワークと呼ばれる運動があります。この運動も強度としては高くないのに、何度か繰り返していると筋肉がプルプルと震えることもあれば一気に力が抜けるように動くといった、運動の量と速度がコントロールできなくなってしまう場面が見られます。

 

 

図1.フットワークの例(ピラティスマシンFactory様の記事から画像引用)

 

 つまり低負荷~中等度負荷における局面では、運動指令の量が多くなりすぎるとそれに付随した余分な運動指令(ノイズ)によって、運動の精度や反応速度が低下しそれを抑えようと更に不必要な筋収縮が生じ、運動の精度が低下していくという負のサイクルが起きてしまいます。これらの現象を踏まえた上で、次の項目ではプルプルを改善する方法について解説していきたいと思います。

 

<プルプルを改善するには?>

 それではもう一つの本題である、プルプルを改善する方法についても解説していきましょう。ですがここまで記事を読んだ皆さんであれば、プルプルが起きる原因が理解できているため、解決策もすでに見えているのではないかと思います。

 端的に言えば”どんな強度の運動に対しても、適切な運動指令の量を選択できるようになる”ということになります。文字で見ると簡単そうに感じますが、実際にそれが出来るようになるためには、様々な種類の運動(ピラティスエクササイズ~筋力トレーニングまで)を低強度~高強度と幅広く条件を変えながら繰り返していく必要があるため、その人それぞれですが改善までは長い期間が必要となります。

 実際に現場で多いのは、他の記事でも何度か出している例ですが”身体の緊張が抜けなくなっている”というケースが多いです。このようなケースでは、低負荷の運動を実施しようとしているのに、中等度~高負荷の運動を実施しているような身体の使い方を選択しているといったことが起こります。

 このようなケースでは、ピラティスを中心としたエクササイズを実施する中で、低負荷の運動を無理なく行えるかどうか確認しながら、中等度~高強度の運動まで進めていくことになります。もちろん人によってはそもそもの筋力が足りない事で、適切な運動指令を選択出来ない場合もあるため、順番が変わって高負荷の運動から開始する場合もありますが、最終目標は低負荷~高負荷までの運動を適切に実践できるようになることに変わりありません。

 以上でプルプルを改善する方法についての解説を終了したいと思います。それでは、以下にまとめとして今回の記事における振り返りも記載していますので、お時間のある方はそちらもご一読して頂ければ幸いです。今回も長い記事になりましたが、ここでいったん失礼いたします。

 

<まとめ> 

いかがでしたでしょうか。今回はピラティスでプルプルする理由と改善方法について、書かせて頂きました。冒頭でも書かせて頂きましたが、結論ピラティスをしてプルプルと震える方は様々な種類・強度の運動を通じて、自分の身体を理解して思い通りに身体をコントロールする方法を体得する必要があるということでした。

当施設ではピラティスはもちろんですが、様々なトレーニングに利用できる道具を取り揃え色々な運動を実施できる環境を作っています。実際に利用されている人の中には、ピラティスを中心に実施することで悩みを解決できる人もいれば、別の運動を実施した方が良い場合もあります。この記事を読んでいる方の中には、「筋トレは好きじゃないなー」や「ピラティスがとにかく好き」と言った人もいるのではないかと思います。

ただそのような方にこそ、悩みを改善するにはどうすれば良いのかを一度立ち返って考えてみて欲しいのです。もちろん、私たちも利用する方に気持ちよく運動してもらいたいと思っていますが、最終目標は利用されている方の悩みが少しでも良くなることであると考えていますので、時には好みではない運動を提供することがあります。当然、そのような運動を実施する理由についても説明はしていますが、そんな経験をすると嫌になってしまう方が多いかと思います。ですが、もし今回の記事を読んで興味を持っていただけた方は是非、嫌いにならず継続するキッカケにして頂ければと思います。

今回の記事も文章量が多くなってしまいましたが、ここまで読んで頂いた皆様にはピラティスでプルプルする理由と改善方法を理解した上で様々な運動を実践して頂ければと思います。今回の内容が少しでも皆様の役に立てば幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。

 Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

 

参考引用文献

1)Harris CM, Wolpert DM et al.: Signal-dependent noise determines motor planning.: Nature.: 1998 Aug20; 394(6695).

2)Rieko Osu, Naoki Kamimura et al.: Optimal impedance control for task achievement in the presence of signal-dependent noise.: J Neurophysiol.: 2004 Aug; 92(2).

3)ピラティスマシンFactory様の記事より:https://pilates-machine.jp/2024/02/21/tips-for-ankle-sprains-and-pilates-reformer-exercises/