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・本記事から得られるもの、理解できる事
〇股関節痛を軽減する運動についてある程度理解できる
〇「FAI」の予防方法がある程度理解できる
それでは、さっそく解説していきます!
こんにちは、Basisの新田です。
今回はFAI(Femoro Acetabular Impingement:大腿骨寛骨臼インピンジメント)に有効な運動について、皆様に少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。今回の記事は私自身が論文を読んで参考になった部分と現場での経験を中心に解説していきたいと思います。まずは前回の記事で紹介したFAIについて復習した上で、FAIに効果的だと考えられる運動と予防方法などについても深掘りしていければと思います。
それではさっそくFAIについて簡単に復習しておきましょう。そのためにもまずは股関節の構造について復習していきます。図1を参照すると、左図の状態が立位における股関節の状態となります。この段階で骨頭は臼蓋に対して2/3ほど収納されて安定性が高い状態と言えますが、さらに前方~後方にかけては図2で紹介しているような関節包靭帯や様々な筋肉(腸腰筋・大腿直筋・Iliocapsularis、梨状筋・内閉鎖筋など)で覆われておりさらに安定性を高める構造になっています。
そしてFAIとはこの安定性の高い股関節に生じた変形であり、股関節の臼蓋or骨頭のどちらか一方または両方に変形が生じた状態を指します。FAIはレントゲンを用いて診断されますが、論文上では変形と痛みには有意な関連がないことも併せて紹介させて頂きました。しかし現場ではFAI様の痛みで困っている方にお会いすることが多いのも事実としてあります。
ここまでで股関節の構造とFAIについて復習できたかと思いますので、それを基にした股関節痛に有効な運動とFAIの予防方法を解説していこうと思います。まずは前回から今回まで、「股関節は安定性の高い関節である」と言うことを何度も説明してきましたが、この前提条件をいったん忘れてください。
論文上では安定性が高い関節であるということは確かなのですが、股関節の機能的な側面から考えてみると、股関節は「安定性+可動性」の相反した機能を両立しなければいけない関節と言えます。そのため実際の現場では動作時に痛みを感じる方もいれば、同じ姿勢を取り続けた時に痛みを感じる方など、安定性・可動性のどちらが欠如しても症状が現れます。
私個人の考えも多分に含まれてしまいますが、股関節は痛みが生じやすい関節の1つであり、論文で説明されている以上に機能的で難しい関節であると考えています。このように難しい股関節の痛みを軽減するために重要なのは、「安定性⇔不安定性」を必要な時に切り替えられるかつ両方の幅を持つ必要があるということです。
図1.股関節の構造
図2.関節包靭帯
それでは、ここからは本題のFAIを予防する方法と股関節痛を軽減する運動について解説を進めていきたいと思います。FAIによって引き起こされる痛みは、股関節の前方部に生じることが現場では多いです。痛みが前方に出やすい理由として2つあると考えています。
1つめの理由として、股関節後方にある殿筋群の緊張が亢進した結果、股関節前方にかかる負荷(ストレス)が増大し痛みを生じることがあります。2つめの理由として、前方にある筋肉や神経の滑走不全により、組織にかかるストレスが増大したことで痛みを生じることがあります。
上記の理由が2つ同時に生じているケースもありますが、順序として多いのは1つ目の股関節後方筋群の緊張が亢進することによって、2つめの理由を惹起してしまうことが多い印象があります。この後はオススメの運動を紹介していきますが、上記の理由から股関節後方の筋群に対する運動から開始して、前方へのアプローチを進めていくのが基本的な方法になります。次からは、股関節痛を軽減する+FAIを予防することにも繋がるオススメの運動を3つ紹介していこうと思います。
まず1つ目はロックバックというエクササイズです。こちらの運動は上にも書かせて頂いたように、股関節後方にある殿筋群の伸張性を出していくことで股関節屈曲動作を改善するのが主な目的の運動になります。それ以外にもこちらのエクササイズは、自分の股関節がどこで適合するのか知ることが出来るというメリットもあります。
股関節が適合した状態で動作を実施することで、痛みが少ない→運動する恐怖心も少なくなるといった効果も期待できるため、非常にオススメの運動です。私自身もこのエクササイズは運動指導において多用していますが、このエクササイズを実施すると、その人の動作時のクセも見ることが出来るため一石三鳥のエクササイズとなります。
図3.ロックバックエクササイズ(写真協力:当施設代表の山下)
2つ目はヒップモビリティというエクササイズです。こちらの運動は1つめのロックバックを実施した流れで指導することが多いです。この運動の目的は、股関節の内旋・外旋に関わる筋肉を刺激しながら、股関節の適合性向上を図るのが主な目的となります。最初の運動では股関節が屈曲方向に可動するエクササイズでしたが、こちらは内旋・外旋を中心に様々な方向へ股関節を動かすことで、股関節の安定した3次元動作を再獲得することに繋がります。
図4.ヒップモビリティエクササイズ(左図は股関節内・外旋運動、右図はスクワット動作)
3つ目はオブリークスクワットというエクササイズです。この運動の目的は、股関節の3次元動作を立位に繋げることが主な目的となります。2つ目までのエクササイズで、股関節の3次元動作に関わる筋肉を刺激し、股関節機能の向上は得られていると考えられます。しかし機能改善=痛みが楽になるという、簡単な式は私たちの身体には起こりにくいです。
ここまでのエクササイズで獲得した股関節機能を、実際に使用する動作・生活へ繋げることが最終的には必要となるため、以下のような立位~スクワット~方向転換(右向き⇔左向きの繰り返し:複合動作)というエクササイズは必須なのです。
図5.オブリークスクワットエクササイズ(スクワット+方向転換を繰り返す)
いかがでしたでしょうか、今回はFAIに有効な運動(股関節痛を軽減する運動)について書かせて頂きました。今回は股関節が安定性だけではなく、可動性も両立する必要があるということも含めて記事を書かせて頂きました。前回に引き続いて難しい用語が多くなってしまいましたが、ここまで読んで頂いた皆様は、股関節に対しての理解が非常に深まったことと思います。
今回の記事で紹介させて頂いた運動をぜひご自宅でも実践して頂けると幸いです。ただ、実際にやってみても「なんだかうまく動かせていない気がする・・・」「動かすとやっぱり痛みがある」など不調が見られた方は無理せず、気軽に相談して下さい。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。
Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田
参考引用文献
1)運動器超音波塾より: https://www.jusei-news.com/feature/8072/