「身体を整えて」から「動く」ことで「コンディショング、ライブパフォーマンス」を高め、快適な毎日を過ごせるように、セッション(手技×マシンピラティス)をご提供しています。

・本記事から得られるもの、理解できる事

〇「ピラティスを行う目的」について理解できる

〇「ピラティスの強度設定」について理解できる

〇「ピラティスの物足りなさ」がなぜ起きるか理解できる

 今回はピラティスをしても物足りないと感じる理由について、皆様に少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。これは個人的な見解になりますが、ピラティスが最も得意としているのは、身体機能~身体操作性まで幅広く向上させることだと考えています。そしてもう1つ得意な領域として、運動学習効果も高いという側面を持ち合わせた非常に有益な運動方法の1つであると考えています。

 そんなピラティスの運動強度は、実施するエクササイズの種類・回数によって調節することが出来るため、どんな方でも物足りないと感じることは”原則”無いはずです。結論として、物足りないと感じている場合は、運動を指導している側の目的と運動を実施している方の目的がマッチしていない事が大きな要因であると考えられます。

詳細はまた後述しますが、運動を実施している本人は「身体に負荷をかける筋トレ」をイメージしていて、運動指導者側が「身体操作性を向上させる」ことを目的とした指導をすれば、実施した後にお互いが持つ感覚は大きく離れていると簡単に想像できるかと思います。

さらに言えばピラティスが本当に物足りない運動であれば、スポーツ選手や筋トレ好きな人達がこぞってピラティスを実施する機会はなかったはずです。これは余談ですが、この記事を書いている直近でピラティスの研修を受けてきたのですが、私の身体は2日間かけて全身筋肉痛になっていました。

それでは今回も前置きが長くなってしまいましたが、次の項目からピラティスが物足りないと感じる理由をいくつかの要素に分けて解説していきたいと思います。

<ピラティスを実施する目的>

 まず初めにピラティスを実施する目的から考えていきましょう。この記事を読んでいる皆様の中にも「ピラティスって体幹を鍛えるものでしょう?」とか「姿勢を改善する運動でしょ?」と言うイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。もちろんいま挙げたような目的を持って私自身もピラティスを指導することはあります。

 ですがそもそもピラティスとは、ドイツ人のジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティス(Joseph Hubertus Pilates)氏が創始者として、自分自身がリウマチ熱をはじめとした病気に悩まされた経験から、体操やさまざまな身体に良いとされる運動を実践する中で病気を克服し、健康的な身体を手に入れる(コントロロジー)ことを目的とした”運動~睡眠まで含めた身体活動全て”を指します。

 つまり単に「柔軟性を改善しましょう」や「体幹を鍛えて強くしましょう」と言った目的を目指してピラティスを行うのは、本来のピラティスさんが目指したコントロロジーとは呼べないと考えています。もちろんピラティスさんが生きていた時代と現代では運動量も違いますし、デスクワークが圧倒的に増えているため柔軟性を改善することも大事な要素です。

ですが、やはり”ピラティスを行う目的”という大きな枠で考えると最終的には上記で述べたようなコントロロジーが最終目標になると考えています。その最終目標に向かう途中で必要な要素である、柔軟性の向上・体幹の機能向上を改善するためにピラティスエクササイズを実施する。このような形であれば何も問題はないと思います。

実際に現場では運動量が低下して腰痛が生じている人もいれば、大前提として睡眠が十分に取れていないために不調をきたしている人もいらっしゃいます。その場合はまず運動も大事ですが、睡眠時間の確保という大きな問題を解決する必要があり、その問題解決に対してピラティスエクササイズをする事は目的達成の近道にはならないですよね。

ここまで長くなりましたが、簡単にまとめるとピラティスの目的とは端的に言えば”コントロロジーを達成する”この一言に尽き、その目的を実施者(筋トレがしたい)と指導者(健康的な身体にしたい)のように目的の共有ができていなければ、物足りなさに繋がってしまうというわけです。続いて次の項目ではピラティスの強度設定について解説していきたいと思います。

<ピラティスの強度設定>

 それではこの項目ではピラティスの強度設定について解説していきたいと思います。ですがそのために必要なピラティスの原則について簡単にまとめていきましょう。①Breathing(呼吸)②Concentration(集中)③Centering(中心化)④Control(調整力)⑤Precision(知識や動きの正確性・精度)⑥Flow(流れるように/しなやかに)の6項目がピラティスの原則として存在します。

 上記を1つ1つ解説していると大変な量になるので、今回はザックリと必要な部分だけ解説させて頂きますが、上記の項目においてピラティスが物足りないと感じる要素が2つ存在します。それが⑤と⑥になります。まず⑤Precisionは反復回数よりも動きの精度を上げることが重要視されます。つまり、筋力トレーニングにおける3大原則と別軸の部分を大切にしているのです。

1.過負荷の原則2.可逆性の原則3.特異性の原則が存在します。これも必要な部分だけを解説させて頂きますが、過負荷の原則は言葉の通りで、筋肉を成長させるためには日常生活以上の負荷を与える必要があるという考えです。例えば、60kgの重りを持って10回スクワットを行えば総重量は600kgの負荷をかけたことになり、その負荷を受けて筋肉は肥大し筋力も向上するという考え方です。

 ここまで聞いてみると、ピラティスで60kgの重りを付けて運動するイメージは付かないですし、⑤Precisionの主な考え方からも大きく外れているため、ピラティスで物足りなさを感じる原因になるのではないかと考えられます。続けて⑥Flowでは流れるように連続性を持った動きを重要視するため、先ほどまでの60kgの負荷をかけた状態を想像してみるとピラティスエクササイズにおいて、そんな高重量を抱えた状態で実施するイメージは付かず結果として、”ピラティスは物足りない”という結果を招くことになってしまいます。

 ですが冒頭でも触れたように、ピラティスを実施して筋肉痛を起こすことは可能です。一例になりますが、自分が苦手な筋肉を使うエクササイズ+マシンを使って苦手な方向へ運動を誘導しつつバネによって負荷をかけるという、複数のアプローチを掛け合わせることで筋肉痛が起こせると言った形になります。

 簡単にまとめると、ピラティスの強度設定はピラティスの原則である6項目を中心に考えられており、その中の一部は筋力トレーニングの3大原則と別軸で重要視されるため”ピラティスの物足りなさ”に繋がる可能性がある。しかし負荷のかけ方やエクササイズの選定などを突き詰めていけば、筋肉痛を起こすレベルまで幅広く対応することが出来るということです。

 それでは今回の記事も長くなってきましたので、以上でピラティスの物足りなさについての解説は終了とさせて頂きます。以下はまとめ(裏テーマ)となりますので、お時間がある方は是非、一読して頂ければ幸いです。では、いったんここで失礼します。

<まとめ(裏テーマ)> 

いかがでしたでしょうか。今回はピラティスをしても物足りない理由について、書かせて頂きました。冒頭でも書かせて頂きましたが、原則としてピラティスをして物足りないと感じることは無いはずです。そして物足りないと感じる場合は実施者と指導者の目標や認識がずれている事も解説させて頂きました。

様々なピラティススタジオが県内でも増えてきて、店舗それぞれに特色と考えがあると思います。当施設でも問診という形で利用される皆様がどのようなことに困っているのか、どんな悩みがあるのかを深掘りしていく作業をしています。ただ問診中に時折感じることがあるのは、「目標が曖昧な方が多い」ということです。

私自身が相談として良く受けるのは、「姿勢が悪いのが気になって・・・」「肩こりが酷くなってきて・・・」「慢性的に腰痛が・・・」などが非常に多いです。このような相談をして頂いたときはさらにもう一歩踏み込んで考える必要があり、この記事を読んで頂いている皆様には、「姿勢が悪いのを修正して何をしたいorどうなりたい」という部分まで考えて言葉にするようにしてみて欲しいのです。

最初の問診中にもう1つ踏み込んだ内容まで深掘りするよう心がけていますが、なかなかそこまで考えているor答えられる人は少ない印象があります。ですが良く考えてみるとそこまで答えられることが当たり前なのです。例えば、姿勢が悪い→姿勢を改善する→姿勢が変わり自信が持てるようになったという、最終結果を望んでピラティスをやってみようという行動が起こり、最後に満足できる結果が返ってくるのです。

当施設は「悩みを一緒に改善するために、全力でサポートする」という考えで、ピラティス×手技を用いて皆様のサポートを日々行っています。逆に言えば、皆様の悩みが曖昧であればあるほどサポートする方向性が決まらないということが起こってしまいます。もちろん曖昧な状態で利用しないでくださいというわけではなく、曖昧な中でも「姿勢が変わったら、”こうなりたい・・・”」といった後ろの部分を言葉にしてみてください。

その一言があるだけで、この目標を達成するためには第一段階として~が出来るようになりましょう、それから次は~といったようにサポートする方向性が示しやすくなり、改善にかかる期間も目安ですが伝えられるようになります。もちろん当施設以外でも相談しやすい所であれば、どんどん相談して言葉にして頂ければ良いと思います。

今回の記事も文章量が多くなってしまいましたが、ここまで読んで頂いた皆様には少しでもピラティスを物足りないと感じないために、今回の内容を上手く活用して頂ければと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。

  Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

参考引用文献

1)細田 多穂,柳澤 健 他:理学療法ハンドブック 第1巻理学療法の基礎と評価:協同医書出版社:437-440.: 2010.