「身体を整えて」から「動く」ことで「コンディショング、ライブパフォーマンス」を高め、快適な毎日を過ごせるように、セッション(手技×マシンピラティス)をご提供しています。

・本記事から得られるもの、理解できる事

〇「力を抜く」という現象について理解が深まる

〇「力を抜く」ために必要な要素が理解できる

それでは、さっそく解説していきます!

今回は「力を抜くってどういうこと?」というタイトルで記事を書いていきたいと思います。マットピラティスや運動を行っていると、「もう少し力を抜いてください」「肩の力を抜きましょう」と言われることがありますが、実際に「力を抜く」と言われても、どのようにすれば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。

実際に現場でも、「力を抜いているつもりなんですけど」「これ以上どうやって力を抜けばいいんですか?」といった声を頂くことがあります。

今回の内容も個人的な見解を含んでしまうので、1つの参考程度に読んで頂ければと思いますが、結論として「力を抜く」ということは、身体から全ての力を抜いてしまうことではなく、その場面に必要な力を適切に調整することだと私は考えています。少し難しく感じるかもしれませんが、日常生活の場面やマットピラティスを例に挙げながら、いくつかの要素に分けて解説していきたいと思います。

 

<「力を抜く」とはどういうこと?>

それでは早速、本題である「力を抜く」とはどういうことなのかについて考えていきましょう。例えば、ペットボトルを持つ時に必要以上に強く握る必要はありません。軽い物を持つのであれば、それに合わせて手に入れる力は少なくて済みます。反対に、重たい物を持つのであれば、それに合わせて力を強くする必要があります。

つまり私たちは、普段から身体へ入れる力を無意識のうちに調整しながら生活しています。

ところが運動になると、「しっかりやらなければ」「身体を安定させなければ」と頑張ることで、必要以上に力が入ってしまう場合があります。

特に運動を始めたばかりの方の場合、「正しい姿勢を作ろう」と意識するほど肩や首に力が入ったり、「お腹を使おう」とすることでお腹を固め続けたりすることがあります。このような状態になると、本来動かしたい場所ではなく、別の場所へ力が入ってしまうことがあります。そのため、「力を抜く」ということは単純に身体をフニャフニャにすることではないと言うことです。

目的とした動きに必要な力を残しながら、必要以上に入っている力を適当な量に減らしていくこと。私はこれが「力を抜く」ということを考える上で大切なポイントだと思います。

 

<身体は何もしてなくても「力」が入っている?>

 ここで少し身体の仕組みについて考えてみましょう。私たちの筋肉は、運動している時だけ働いているわけではありません。立っている時や座っている時など、何もしていないように感じる場面でも、身体を支えるために一定の筋緊張が存在しています。このような安静時の筋緊張について考える概念の一つに、Human Resting Muscle Tone(HRMT)があります。

少し難しい言葉になりますが、簡単に言えば、身体は完全に力がゼロの状態で日常生活を送っているわけではないということです。例えば立っている時、身体を支えるためにある程度の筋肉の働きが必要になります。そのため、「力を抜く」と聞いた時に、全身の筋肉を完全に休ませることをイメージする必要はありません。

むしろ大切なのは、今の姿勢や動作に対して必要な筋肉の働きを残しながら、必要以上に入っている力を調節していくことが重要になります。この考え方を知っておくだけでも、「力を抜かなければ」と身体を無理に脱力させようとすることが少なくなるのではないでしょうか。

 

<なぜ「力を抜いて」と言われても難しく感じるのか?>

ここで少し不思議な話になりますが、「力を抜いてください」と言われるほど、逆に力が入ってしまう方もいらっしゃいます。例えば肩の力を抜こうとして、「肩を下げなければ」と頑張ってしまうケースです。この場合、肩の力を抜こうとしているはずなのに、「肩を下げる」という別の力が入ってしまいます。

また、「身体をリラックスさせよう」と考えすぎることで、呼吸まで意識しすぎてしまい、かえって自然な呼吸がしにくくなることもあります。このように考えると、「力を抜く」ということは意外と難しいものです。だからこそ、私は初心者の方に「力を抜いてください」とだけ伝えるのではなく、「今どこに力が入っているかを感じてみましょう」と伝えることがあります。

例えば、「肩が上がっていないかな?」「呼吸が浅くなっていないかな?」「歯を食いしばっていないかな?」と、自分の身体を一度確認してみるのです。力を抜くためには、まず現在の自分の身体がどうなっているのかを知ることが大切になります。

 

<「力が入っていること」に気付くことから始めましょう>

ここまで読むと、「では、どうすれば力を抜けるようになるの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私がオススメしているのは、いきなり力を抜こうとするのではなく、まず「力が入っている場所」に気付くことです。例えばマットの上で仰向けになった状態で、一度身体を観察してみてください。

肩は床に触れているでしょうか。首に力が入っていないでしょうか。歯を食いしばっていないでしょうか。呼吸は普段通り行えているでしょうか。そして、左右で身体の感じ方に違いはないでしょうか。

この時点では、何かを直そうとする必要はありません。「右肩の方が少し浮いている気がする」「思ったよりお腹に力が入っている」「左足の方が床を強く押している気がする」など、感じたことをそのまま確認してみてください。

「身体を意識するってどういう意味?」という記事でも解説しましたが、身体を意識するためには、まず自分の身体へ興味を持つことが第一歩になります。力を抜くことも同じです。

「力を抜かなければ」と頑張るのではなく、「今、自分はどこに力を入れているのかな?」と観察してみる。その観察を行うことで、力加減を調整するための手がかりが見つかると私は考えています。

図1.過剰な緊張状態と適切な緊張状態イメージ

 

<マットピラティスで力を抜くことの意味>

では、マットピラティスでは「力を抜く」ことにどのような意味があるのでしょうか。マットピラティスでは、身体を安定させながら手や足などを動かすエクササイズが数多くあります。この時、「身体を動かさないようにしよう」と頑張りすぎると、必要以上に肩や首、背中などへ力が入ってしまうことがあります。

例えば腕を動かすエクササイズであれば、腕を動かしたいだけなのに肩まで一緒に力が入ってしまうことがあります。また、脚を動かすエクササイズでも、脚を安定させようとするあまり、腰や首まで力が入ってしまう場合もあります。このような時に大切になるのは、「全身の力を抜く」ことではなく、動かす場所と安定させる場所を分けながら、それぞれに必要な量の筋出力を調節することが重要なのです。

もちろん最初から上手にできる必要はありませんし、それが出来る方は身体への悩みが少ない事でしょう。特に運動を始めたばかりであれば、身体のどこに力が入っているのか分からないことも当然です。だからこそ、まずは「この動きをすると肩に力が入りやすいな」「この種目では息を止めやすいな」と気付くことから始めてみてください。

今回の記事は「身体を意識するってどういう意味?」と併せて読んで頂けると、身体の理解が更に深まると思いますので、是非お時間がある方はそちらの記事もご一読下さい。また、個人的には運動が苦手な方は、初めに呼吸を用いたエクササイズによって、身体の緊張を感じ取ったり軽減したりすることが出来るため、次回以降の記事ではピラティス時にオススメの呼吸エクササイズについて解説させて頂ければと思います。

 

<まとめ>

以上で力を抜くってどういうことについて解説を終了させて頂きます。今回の記事を通して、「力を抜いて」と言われることに苦手意識を持っていた方が、まずは自分の身体を観察してみようと思うきっかけになれば幸いです。マットピラティスを行う時も、頑張って身体を動かすだけではなく、「今どこに力が入っているのかな?」と自分の身体へ目を向けながら、無理のない範囲で楽しんでみてください。今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。それでは失礼いたします。

 

 Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

 

参考引用文献

1)Timothy W Cacciatore, David I Anderson et al.: Central mechanisms of muscle tone regulation: implications for pain and performance.: Front Neurosci.: 2024 Dec9;18.

2)Alfonse T Masi, John Charles Hannon.: Human resting muscle tone (HRMT): narrative introduction and modern concepts.: J Bodyw Mov Ther.: 2008 Oct12;4.

3) Çağıl Ertürk, Ali Veysel Özden.: Comparison of the Acute Effects of Auricular Vagus Nerve Stimulation and Deep Breathing Exercise on the Autonomic Nervous System Activity and Biomechanical Properties of the Muscle in Healthy People.: J Clin Med.: 2025 Feb7;14.