「身体を整えて」から「動く」ことで「コンディショング、ライブパフォーマンス」を高め、快適な毎日を過ごせるように、セッション(手技×マシンピラティス)をご提供しています。
・本記事から得られるもの、理解できる事
〇「インナーマッスル」について理解できる
〇「インナーマッスル」を鍛える必要性が理解できる
それでは、さっそく解説していきます!
まずこの記事を読んでいる皆さんも1度はインナーマッスルという言葉を聞いたことがあるのではないかと思います。インナーマッスルについて調べてみると、「胡散臭い」「鍛える必要がない」など様々な情報が出てきますが、今回の記事を通してなぜ胡散臭いと感じてしまうのか、そしてなぜインナーマッスルを鍛える必要があるのかという理由も併せて解説を進めていこうと思います。今回は一部、論文も参考にしながら解説を進めていこうと思っていますので、内容が盛りだくさんになってしまうかと思いますが、覚悟して読み進めて頂ければ幸いです。
まず結論として、①インナーマッスルのみを鍛えるのは非効率②インナーマッスル(特に横隔膜)は収縮感が乏しいという2つの原因によって、鍛える必要が無い・胡散臭いという考え方が出てきたのでは無いかと考えています。これについては私見を多分に含みますので、1つの考え方だと思っていただければ良いのですが、私が現場で確認している中ではインナーマッスルが弱くて動作が適切に出来ないと感じるよりも、身体の緊張を適切にコントロール出来ない(前提条件が整っていない)→インナーマッスルを含めた筋肉が適切に働けないという流れが大きいと考えています。
もちろん記事の中で順を追って解説を進めていきますので、読み終わった時にはインナーマッスルの正体と鍛える理由について理解が深まっていることと思います。鍛える方法については過去の記事で解説していますので、ぜひそちらの記事も読んで頂ければ幸いです。
それでは今回も前置きが長くなってしまいましたが、次の項目からインナーマッスルの正体について解説していきたいと思います。
<インナーマッスルってなに?>
それではさっそくインナーマッスルについて、解説を進めていきたいと思います。まず前提として、インナーマッスルという言葉は解剖学において、正式名称ではありません。解剖学と運動学を2つの領域から、「深層にある」「関節の安定化・姿勢制御に関与する」「フィードフォワード制御(先行収縮)に関与しやすい」という3点が成立しているものを、リハビリやトレーニング領域において、インナーマッスルとして取り扱っています。
インナーマッスルと言えば”体幹”が思いつくのではないかと思います。もちろん代表的なインナーマッスルが存在する部位の1つであり、対象の筋肉として横隔膜・腹横筋・骨盤底筋群・多裂筋が挙げられます。もちろん体幹以外にもインナーマッスルは存在しており、肩関節においては別の名称で”ローテーターカフ”と呼ばれ棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋がインナーマッスルとして取り扱われます。
さらに股関節では梨状筋・内閉鎖筋・上/下双子筋・大腿方形筋などは”深層外旋6筋”と呼ばれインナーマッスルの機能を有していると考えられています。このようにインナーマッスルは、それぞれの部位に存在し私たちの身体を動かす時、常に働いている筋肉として考えられています。これら全てを解説すると時間がいくらあっても足りないため、今回は皆さんが想像しやすい体幹部に対象を絞って解説を進めさせて頂こうと思います。皆さんの反応が良ければ、いずれ肩関節・股関節など部位を分けて解説しようかと思いますので、気長にお待ち頂ければと思います。

図1.体幹部のインナーマッスル
それでは改めて体幹のインナーマッスルについて解説を進めていきたいと思います。先ほども列挙したように、4つの筋肉がインナーマッスルとして取り扱われています。特に腹横筋については論文がいくつも発表されており、古い論文になりますが非常に有名な物から内容を抜粋させて頂きます。その論文によると、上肢運動(バンザイ動作など)において三角筋(肩関節を動かす主要筋の1つ)よりも先行して腹横筋が反応していたと記載されています。そのほかの内・外腹斜筋は腕を動かす方向によって反応に違いが見られたとも記載されています。
この論文から分かることとして、腹横筋は姿勢制御・脊柱安定化のため予測的に制御される筋肉の1つであると言えます。これだけ見ても腹横筋を初めとした体幹部のインナーマッスルを鍛える必要性はありそうだと考えられますね。しかしながらこの論文から問題点も同時に見えてきます。それが何かというと「腕を動かす→腹横筋が先行収縮している」つまり、「腕をどんどん動かすだけで腹横筋が鍛えられるのでは?」という疑問が生まれます。これについては、後ほどの項目で詳しく説明させて頂きますが結論から言えば、部分的には正解ですが、現実的ではないと考えています。
さらに他の筋肉についても研究が行われています。例えば横隔膜についてですが、1つの論文によると横隔膜は呼吸の主動筋として知られているが、体幹安定化筋としても機能すると報告されています。このように横隔膜は呼吸を伴った腹圧調整を行うことで、脊柱・骨盤への負担を軽減し、四肢の動作に先立って横隔膜が活動することで姿勢制御を助ける働きも持っているということです。
その他、骨盤底筋群と多裂筋に関しても横隔膜・腹横筋と協調して働く必要があります。こちらに関しては別の論文を基に私自身の考察も含めて紹介させて頂きますが、多裂筋は脊柱の局所安定に関与しており、骨盤底筋は腹圧調整と姿勢制御さらには呼吸に関係していると記載されています。最終的には4つの筋群が協調して働くことで、圧・張力が身体活動において適切に調整されるようになります。こちらの理論については、次の項目で深掘りしていきます。
以上が体幹に関係するインナーマッスルの正体になります。ここまででインナーマッスルの理解が相当深まったと思いますので、次の項目ではインナーマッスルを鍛える理由と方法について解説を進めていきたいと思います。
<インナーマッスルを鍛える必要はある?>
それではもう一つの本題である、インナーマッスルを鍛える理由についても解説していきましょう。先ほどの項目でも、上肢運動に先行して腹横筋の収縮が見られたという説明をしましたが、この現象だけを鵜呑みにするのは危険だと私は考えています。その理由として、大前提である”腹横筋が収縮しやすいポジションを整える”ことが抜けているからです。
現代人の特徴的な姿勢の1つとして、オープンシザースシンドロームがあることは他の記事で何度も取り上げてきました。この姿勢は肋骨外旋位+骨盤前傾により、反り腰が増強された状態になります。つまり腹横筋は引き延ばされた状態となり適切な収縮が得られにくいポジションとなっています。
上記のような姿勢で上肢運動を繰り返し行ったとしても、腹横筋は適切に働くことが出来ず、その他のインナーマッスルが過剰に収縮して運動を実施してしまい(代償動作と呼びます)効率のよい身体運動が制限されてしまいます。拡大解釈かも知れませんが、この4つの筋群どれかが1つでも出力低下を起こすと、出力が低下した筋肉を中心に運動制御を再構築してしまうのです。このような理論は論文から、”マッスルシナジー理論”という名称で説明されたりしています。
私自身が現場で実践していることも含めてここまでの内容をまとめると、立位姿勢などから働きにくい状態にある筋肉を推測し、ピラティスエクササイズなどを実践して代償動作が観察されれば、本来反応するべき筋肉が適切に働ける状態へエクササイズを対象者に合わせて変化させていきます。そうすることで、改めて適切なマッスルシナジーを再構築していくことになります。先ほどの腹横筋を例に挙げると、反り腰の状態から身体を屈曲(丸くする)方向へ修正することで、筋の収縮方向を適正化してから上肢運動と組み合わせることで改善を図る必要があると考えています。
以上の内容は言葉で説明すると簡単に聞こえますが、まだ大きな問題があります。腹横筋を初めとしたインナーマッスルに共通する問題として、収縮感が乏しいことが挙げられます。この収縮感が乏しいことが、インナーマッスルが胡散臭く感じられている大きな要因の1つだと私自身は考えています。
体幹部にあるインナーマッスルの中では横隔膜が最たる例ですが、横隔膜には筋紡錘がほぼ存在しないため、自分で筋の収縮を感じることが出来ず適切なトレーニングがしにくい筋肉の1つとなります。「じゃあ横隔膜はトレーニング出来ないじゃないか」ということを考えてしまいますが、横隔膜は肋骨に付着しており肋骨は肋軟骨を含む可動性を有した構造であるため、呼吸など運動時に形状が変化します。
このように筋肉が収縮することで周囲の構造が変化するため、収縮感が乏しい筋肉ではありますがトレーニングをして変化を実感することは可能です。もちろん最初から「肋骨がこの方向に動いた」と自覚できる人は多くないため、呼吸~体幹屈曲・伸展~回旋/側屈など順序や運動方向も注意しながら様々な刺激を与える必要があります。
ここまで解説を進めてみると、インナーマッスルを適切に鍛えるためには前提条件を整える必要があり、さらにインナーマッスルのみを鍛えるだけでは不十分であることも併せて理解できたかと思います。一部の例外として長期間かけて機能が低下したインナーマッスルは、前提条件を揃えた状態でも十分な収縮感が得られないことが現場では見られます。
その場合においてはインナーマッスルを単独で収縮練習することもありますが、基本的に日常生活が送れている状態であれば、そこまで一部の筋肉だけを収縮させる必要性は少ないと考えています。具体的な鍛える方法(エクササイズ)は過去の記事も見て頂ければと思いますが、私のオススメは「ピラティスにおけるエレファントとは」や「ピラティスにおけるテーブルトップポジションとは」などが体幹部を刺激する方法として、個人的にオススメしたい所です。
以上で非常に長くはなりましたが、インナーマッスルが胡散くさく感じる理由についての解説を終了したいと思います。インナーマッスルが何なのかが理解できると、インナーマッスルを鍛える理由が理解でき、なぜインナーマッスルが胡散臭く感じるのかという部分についても見えてきたのでは無いかと思います。それでは、以下にまとめとして今回の記事における振り返りも記載していますので、お時間のある方はそちらもご一読して頂ければ幸いです。今回は非常に長い記事になりましたが、ここでいったん失礼いたします。
<まとめ>
いかがでしたでしょうか。今回はインナーマッスルが胡散臭く感じる理由について、書かせて頂きました。冒頭でも書かせて頂きましたが、結論としてインナーマッスルのみを鍛えるのは現実的ではなく、インナーマッスル自体の収縮感覚が乏しいことで、インナーマッスルは不必要だという考えが一部で広がっているのだと考えています。
ピラティスエクササイズと言えば、「インナーマッスルを鍛える」というイメージを持っている方が大半かと思いますが、実際にはインナーマッスル+アウターマッスルの両方をバランス良く鍛えることになります。
さらにはピラティスを通して、自分の身体を理解して思い通りに身体を動かせるようになることで、姿勢や運動時の緊張を適切にコントロール出来るようになる。そこまで出来るようになると、自分の悩みを解決するという最終目標に大きく近づくのです。むしろここまでやらなければ、インナーマッスルが鍛えられたとしても実践では使えない、知識だけが増えたような状態になってしまいます。
当施設ではピラティスエクササイズはもちろんですが、その他の様々なトレーニングを複合的に提供できる環境を揃えることで、皆さん1人1人に合わせた運動プログラムを作成・実践しています。初めにピラティスエクササイズによって低~中閾値(インナーマッスルを含む)をコントロールし、高閾値(インナー+アウター)まで鍛えていくことになります。今回の記事を読んで「インナーマッスルだけじゃ駄目なんだ・・・」「改めて運動を始めようかな・・・」と感じた方は是非、お気軽にお問合せ頂ければと思います。
今回の記事も文章量が多くなってしまいましたが、ここまで読んで頂いた皆様が少しでもインナーマッスルについて理解を深め、胡散臭い・鍛える理由が無いと感じなくなる手助けになればと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。
Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田
参考引用文献
1)P W Hodges, C A Richardson.: Feedforward contraction of transversus abdominis is not influenced by the direction of arm movement.: Exp Brain Res.: 1997 Apr; 114(2).:362-70.
2)Anderson S Oliveira, Leonardo Gizzi et al.: Motor modules of human locomotion: influence of EMG averaging, concatenation, and number of step cycles: Front Hum Neurosci.: 2014 May23.
3)Lena H Ting, Hillel J Chiel et al.: Neuromechanical principles underlying movement modularity and their implications for rehabilitation.: Neuron.: 2015 Apr 8;86(1).: 38-54.
4)西沢 喬 田高 智美 他:体幹同時収縮に関する検討:理学療法学Supplement2012.
5)R R Sapsford, P W Hodges, et al: Co-activation of the abdominal and pelvic floor muscles during voluntary exercises.: Neurourol Urodyn.: 2001.
6)E Bizzi, V C K Cheung et al.: Combining modules for movement.: Brain Res Rev.: 2008 Jan;57(1).: 125-33.
7)E Bizzi, V C K Cheung et al.: The neural origin of muscle synergies.: Front Comput Neurosci.: 2013 Apr 29.
8)Gelsy Torres-Oviedo, Lena H Ting et al.: Muscle synergies characterizing human postural responses.: J Neurophysiol.: 2007 Oct;98(4).: 2144-56.
9)Christine Lynders.: The Critical Role of Dvelopment of the Transversus Abdominis in the Prevention and Treatment of Low Back Pain.: HSS Journal.: 2019 Aug;29(15).: 214-220.
10)Richard R Neptune, David J Clark et al.: Modular control of human walking: a simulation study.: J Biomech.: 2009 Jun;42(9).: 1282-7.
