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・本記事から得られるもの、理解できる事
〇「外側上顆炎(テニス肘)」について理解できる
〇「外側上顆炎(テニス肘)」の痛みを軽減する方法が理解できる
それでは始めていきましょう!
こんにちは、Basisの新田です。
今回は外側上顆炎(テニス肘)について皆様に少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。今回も論文や書籍を参考にしながら解説していきたいと思います。外側上顆炎は通称テニス肘とも呼ばれるため、こちらの名称で皆様は聞くことが多いのではないかと思います。
はじめに外側上顆炎は30歳代~50歳代に多く見られる疾患で、男女差は明確ではありません。また、通称テニス肘と呼ばれることからもテニスやバドミントンなどのラケットスポーツに最も多いと報告されていますが、実はスポーツを全くしていないオフィスワーカーでも発症することがあります。
次に診断基準と特徴的な症状を解説していこうと思います。診断基準は(1)上腕骨外側上顆の伸筋群起始部に最も強い圧痛がある(2)手関節背屈運動(手首を起こす動き)に抵抗すると肘外側に痛みがある(3)腕頭関節の障害などの伸筋群起始部以外の障害は除外するとされています。ここまで聞いてもどういうことかパッと想像できないと思いますので、続いて特徴的な症状について解説していこうと思います。
特徴的な症状として1.物を掴んで持ち上げると痛い2.雑巾やタオルを絞ると痛い3.安静時に痛みはないという3つが挙げられます。ここまで何度も上腕骨外側上顆という名称が出てきましたが、こちらは肘の外側に存在する膨らみを指す解剖学用語になります。そして上腕骨外側上顆に付着する筋肉の多くが手首を起こす運動に関与していて、長/短撓側手根伸筋(ECRL/ECRB)・回外筋・総指伸筋・小指伸筋・尺側手根伸筋・肘筋などがあります。
上記で挙げた筋肉の中でも、短撓側手根伸筋の近位部が主な障害部位と言われることが多いようです。その理由の1つとして、短撓側手根伸筋は近位部に筋成分をほとんど含まず、腱成分で構成されているため、その他の伸筋群と比べて血流が乏しくなりやすく治癒機転が進みにくいことにより、負荷が集中しやすいのではないかと言われています。
ここからは上記の代表的な症状以外に、現場で相談されることが多い症状についてもまとめていきたいと思います。人にもよりますが、手指屈曲動作(握りこむ動き)だけでも痛いという症状があります。これに関しては、テニス肘で多い上肢の位置関係も影響しています。書籍の一部によると肘関節外反(上腕が外に向いた状態)+前腕回内位(手のひらが下に向いた状態)+手関節尺屈位(手首が外に倒れた状態)を呈した状態が多いと報告されています。
このような姿勢でデスクワークやテニスをはじめとしたスポーツを繰り返し行うことで、ECRBや前腕の伸筋群、円回内筋などの筋肉に過剰な負荷を与え続けることになり、それに伴った長母指屈筋や母指球筋の過緊張へと繋がっていきます。さらに前腕回内+手関節尺屈位という位置関係では、手指屈曲動作が非効率となり、前腕伸筋群と手指の筋は手関節を固定するためにさらに過剰な収縮を引き起こします。
テニス肘の初期対応として安静加療を行うことが重要と言われていますが、上記のような状態になってしまうと、位置関係と筋緊張の悪化が繰り返されることで負の連鎖が生じ「休ませているはずなのに、実際は筋肉が休んでいない状態」となってしまうのです。
ここまでで肘の病気だとしても、手指屈曲動作が重要であるということが理解できたと思いますので、皆さんには自宅で出来るセルフチェックを2つだけお伝えしたいと思います。まずは手指を握りこむ動作で確認してみましょう。じゃんけんのグーでは正確な手指の機能は確認できないため、手指の根本(第3関節)に向かって指を握りこみ横から手指を見て「Yの字」が出来ていれば十分な機能が保持されていることになります。
図1.「Yの字」チェック(右<左でわずかな機能低下あり)
もう1つのセルフチェックとしては、前腕の回内・回外運動で調べる方法になります。これは肘の機能に直結する部分を確認する方法となります。まず、両手にペンを持った状態で手のひらを上下に向けるように捻っていきます。左右で比較して痛みのある方は動きが乏しい状態になります。そして動きが乏しい状態では、肩の動きを使った代償動作が出てくるため鏡などを使って正確に確認することをおすすめします。
図2.前腕回内・回外チェック(右<左でわずかな動作制限あり)
最後にテニス肘の痛みを軽減する方法を論文から紹介したいと思います。テニス肘の痛みを即時的に低下させる1つの方法として、サポーターの使用が挙げられます。今回紹介する論文では前腕/手首に装着するサポーターを4つ用意し、どのような反応が見られたのか調査していました。
結果として前腕にサポーターを装着した群では握力が有意に向上し、手関節背屈筋群を収縮した際の痛みの減少も確認されました。手首に装着するサポーターにおいても手関節背屈筋群の疼痛は有意に減少していましたが、握力の向上は見られませんでした。以上の事から、痛みと握力の改善に効果がある前腕装着タイプがオススメとなります。
このような現象が起きる要因については論文中で記載されていませんでしたが、1つの仮説として、前腕/手首にサポーターを装着することで手関節背屈筋群に圧迫刺激を与え、装着部位より近位では筋肉が収縮した際に腱へかかる伸張ストレスを軽減することが考えられます。
論文中に記載されていた注意点として短期間の使用であれば効果が期待されていましたが、長期間の使用にはエビデンスが発見されておらず、その他の研究においても長期間の使用は否定的な意見が多いため、根本解決には向かないと考えられます。
いかがでしたでしょうか。今回は外側上顆炎(テニス肘)について解説させて頂きました。私自身が現場で肘のコンディションについて相談されることもあるため、改めて論文などを含めて調べてみましたが、以外にも数が少なく簡潔にまとめるのに苦労してしまいました。
現場感として確かなのは、痛みのある筋肉に対して正確なストレッチを施行することが最も効果的な方法の1つだと思っていますが、「正確に・痛みなくストレッチを行うこと」自体が非常に難しいこともまた確かだと思っています。そのため、もしこの記事を読んでいる人の中で肘に痛みや不調を感じている方は、当施設へ気兼ねなく相談へ来ていただけると幸いです。
今回も長くなってしまいましたが、この記事を読んで少しでも肘の痛みについて理解が深まる参考になれば幸いです。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。失礼いたします。
Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田
参考引用文献
1)相澤 純也,中丸 宏二 他.疾患別整形外科理学療法ベストガイド 上肢・脊椎編:中外医学社:139-147.: 2018.
2)Luke J Heales, Stacy R McClintock et al.: Evaluating the immediate effect of forearm and wrist orthoses on pain and function in individuals with lateral elbow tendinopathy: A systematic review.: Musculoskelet Sci Pract.: 2020 Jun;47