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・本記事から得られるもの、理解できる事
〇「坐骨神経痛」について理解できる

それでは始めていきましょう!

こんにちは、Basisの新田です。

 今回は腰~下肢の痛みで関わることが多い、坐骨神経痛について少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。今回も書籍や論文を基に私自身が参考になった部分を中心に解説していこうと思いますので、よろしくお願いします。まずは坐骨神経痛を理解するために、改めて骨盤帯の構造・役割を解説させて頂き順を追って坐骨神経痛について深掘りしていきたいと思います。
 はじめに以下の図1は骨盤を後方から見た模式図となります。坐骨神経というのは仙骨神経叢という脊柱管から起こる神経の分岐した物を指します。その中でも坐骨神経が始まる場所はL4~S3(腰椎4番~仙骨3番)で大腿後面を走行し、膝窩部(膝の裏)で脛骨神経と腓骨神経の2つに分かれます。
 この神経に何かしらの条件が加わると、代表的な症状としてお尻が痛い・太ももの後ろが痛い・ビリビリと痺れる感じがするなどの症状があります。その中でも①膀胱直腸障害(尿意が分かりにくくなる、便が出にくくなるなどの症状)②著明な筋力低下(足首が起こせないなど)③生活に支障が出るレベルの痛み(じっとしている時も痛い)といった症状は手術適応の可能性も高くなるため、上記3つの強い症状を1つでも自覚している方はまず医療
機関の受診をオススメします。

図1.骨盤を後方から見た模式図

主な坐骨神経痛を生じる要因としては、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症があります。ほかにも側弯症や股関節疾患なども要因として考えられます。このような疾患が関係するのもこれから説明する、神経がどこを走行しているかを細かく見てみると理解できるようになるかと思います。
 図2は基本的な坐骨神経の走行を簡易的に示した物になります。”基本的な”と書かせて頂いたのは、論文や書籍にもよりますが坐骨神経の走行にはいくつかのパターンが存在することが分かっています。さきほど紹介したパターンが最も多く、約90%の方が梨状筋の下を走行するType-A。梨状筋を貫く線維と梨状筋の下を走行する線維の2つに分かれるType-Bが7.1%。
それ以降はさらに数が少なくなり、梨状筋の上下を挟むように走行するType-Cが2.1%、梨状筋を貫いて走行するType-Dが0.8%存在しています。このように坐骨神経自体の走行に様々なパターンがあり、さらには梨状筋の形態にも個体差があることが分かっています。最も多いのは梨状筋が独立して存在する通常型が54%、上双子筋・内閉鎖筋と癒合して梨状筋となっているパターンが29%、内閉鎖筋・中殿筋と癒合しているパターンが13%、中殿筋と癒合しているパターンが4%とこちらも、さまざまパターンが存在します

   表層    →→→→→ 深層
梨状筋  坐骨神経  上・下双子筋 内閉鎖筋

図2.坐骨神経の走行簡易図

坐骨神経の走行と梨状筋の関係性を絡めて考えると、梨状筋が上双子筋・内閉鎖筋と癒合している場合では、坐骨神経を絞扼するようなストレスがかかりやすい可能性があります。筋肉の収縮に合わせて神経も圧迫+伸張のストレスを受けますが、筋肉の位置関係から見ても上方向へ筋肉が収縮することが考えられ坐骨神経への圧迫ストレスが通常のパターンよりも高まる可能性があります。そして、図1には記載されていませんが中殿筋はさらに上に付着がある筋肉ですので、上双子筋・内閉鎖筋の癒合パターンよりも強く影響を受ける可能性があります。
このように坐骨神経は脊柱から始まり骨盤を走行する形をとるため、ヘルニアや脊柱管狭窄症、側弯症などの脊柱と関連した痛みを出すこともあれば、殿筋を走行する部分で影響を受けることもあるため、股関節と関連した痛みを生じると理解できますね。次の項目からは坐骨神経痛の有病率や基本的な治療方法などに関して論文を紹介していきたいと思います。
 1つ目は坐骨神経痛の有病率や薬物療法における反応性を調べた論文になります。この論文では急性の坐骨神経痛の臨床経過は良好であるとされており、最初の6~8週間は保存治療が用いられるべきだと書かれていました。特に運動療法をはじめ鎮痛薬などの薬物療法や椎間孔周囲への神経根ブロックが有効な方法と報告されていました。
手術療法として椎間板切除術も紹介されており、短期的な成績では有効とされていましたが、上記の保存治療を長期期間にわたって実施した場合と比べると効果的ではないようです。また手術を実施する場合は重度かつ進行性の神経症状がある場合とされていて、そのような症状がない場合はDr.と相談することが重要であるとも書かれています。そして有病率に関しては変動が大きく、1.6%~43%と非常に範囲が広いようです。
有病率がここまで変動する1つの要因としては、厳密な定義として痛みの分布や痛みの持続期間の要素を考慮していなかったことが挙げられます。環境因子として肉体的に厳しい仕事に就いている労働者集団を対象とした研究では、一般的な集団を対象とした研究と比較すると坐骨神経痛の発生率は高くなる傾向にあることが報告されています。
 別の論文では予後に関しても記載されており、急性の坐骨神経痛の患者はほとんどが予後良好でしたが、約20~30%は1~2年後にも何かしらの問題が継続していることがあるようです。そしてこちらの論文では安静による治療よりも積極的な治療が望ましいと報告されています。積極的な治療という物が何を指しているのかは明記されていませんでしたが、個人的な意見で言えば、運動療法も含まれているのではないかと思います。
 いかがでしたでしょうか。今回は坐骨神経痛について書かせて頂きました。坐骨神経痛と1口に言っても、原因は多岐にわたり痛みを出す部位も違ってくることが理解できたかと思います。次回以降は坐骨神経痛を軽減する方法・オススメの運動について、書かせて頂きたいと思います。この記事が少しでも坐骨神経痛を理解する手助けになれば幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。

 Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

参考引用文献
1)Jean-Pierre Valat, Marc Marty et al.: Sciatica. : Best Pract Clin Rheumatol.: 2010 Apr;24 (2).
2)Kika Konstantinou, Kate M Dunn.: Sciatica: review of epidemiological studies and prevalence estimates.: Spine.: 2008 Oct;15 (22).
3)B W Koes, M W van Tulder et al.: Diagnosis and treatment of sciatica.: BMJ.: 2007 Jun;23(7607).