「身体を整えて」から「動く」ことで「コンディショング、ライブパフォーマンス」を高め、快適な毎日を過ごせるように、セッション(手技×マシンピラティス)をご提供しています。

・本記事から得られるもの、理解できる事

〇肩関節について理解が深まる

〇肩関節の動きを改善する方法についてある程度理解できる

〇肩関節の運動についてある程度理解できる

それでは、さっそく解説していきます!

 

今回は肩関節に効果的な運動を3つ紹介していきたいと思います。今回、紹介する運動も現場で実践して非常に効果的な運動だと自信をもって解説させて頂きますが、全てのエクササイズに共通する注意点として、いま現在日常生活においても痛みが強い場合は、無理して実践しないようにしてください。

まず大前提として肩関節とは何なのかを構造から理解しておくと、今回取り上げている運動以外にも、何か別の媒体からエクササイズの情報を得た際「この運動は肩関節のどの筋肉へ刺激を入れているのかな?」など、その運動がどこを狙っているのが理解できますし併せて「じゃあ、こんな風に動かしたらどうなるかな?」と言う、自分で運動をカスタムできるといったところまで、最終的には繋げられるようになってくると思います。

 

それでは本題の肩関節に効くピラティスエクササイズを知る前に、簡単ではありますが肩関節とはどのような構造なのかを次の項目から解説させて頂きたいと思います。

 

<肩関節の構造について>

 それでは初めに簡単ではありますが、肩関節の構造について書籍も参考にしながら復習していきましょう。図1を見てみると、肩関節とは肩甲骨の関節窩と上腕骨頭で構成された肩甲上腕関節が代表的です。なぜこういう書き方をしているかと言うと、実は肩関節と呼ばれる物は5つ存在し、解剖学的に関節と呼ばれるのは先ほど紹介した肩甲上腕肩関節以外に①胸鎖関節②肩鎖関節が真の関節と呼ばれます。

 それ以外にも機能的関節として、③肩峰下関節④肩甲胸郭関節が存在します。後ほど紹介する肩関節エクササイズでは、肩甲胸郭関節も含めた運動を紹介するのですがその理由として、肩甲上腕関節のみを対象とするエクササイズは非常に細かく低負荷の運動に限局されてしまうことが挙げられます。もちろんそれも非常に有意義な運動ではありますが、今回はそちらのエクササイズについては別の機会に紹介する形を取らせて頂きたいと思います。

少し話が逸れてしまいましたが、肩甲上腕関節について解説を続けますと関節構造は滑膜性であり、形状は球関節という多軸性(様々な方向へ動く)の関節となります。この球関節というのは非常に特殊な関節形状で、人体には肩関節と股関節の2つしか存在しません。

 そして同じ球関節でも股関節と大きく違うのは、関節が収まる窪みの関節窩が狭いことが挙げられます。つまり、単純に股関節よりも肩関節の方が不安定であるにも関わらず、可動性は同じレベルで担保する必要があるということです。私が良く使う例えとして、ゴルフのピンに対してゴルフボールを乗せるような状態が、肩関節の構成ですと伝えることがあります。そう表現されると、股関節と比較した時の不安定性も理解しやすいかと思います。

図1.肩関節の構造
 

それでは先ほどのイメージを持って図2を見てみると、肩関節は様々な靭帯によって関節安定性を高める形状を取っているのが分かると思います。例えば関節上腕靭帯(上・中・下の3部あります)は関節包の前面を走り、関節唇の周縁と上腕骨の小結節さらにはその下方にある解剖頸まで付着しています。烏口上腕靭帯は関節包の上面を走り、烏口突起の基部(根本の事です)と上腕骨大結節の間を繋いでいます。

そして、図には記載されていませんが烏口肩峰靭帯は関節の上方に位置し、烏口突起と肩峰の間をつなぐ強靭な靭帯であり上腕骨頭が上方へ脱臼するのを防いでいて、靭帯構造だけで上方~前方~下方までを幅広く補強する関節であることが分かります。これだけ周囲を補強している肩関節ですが、それでも安定性が不十分であり主に回旋筋腱板と呼ばれる筋群(棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4つです)が肩関節の安定性を底上げしています。

 さらに肩関節を包む関節包の周囲には滑液包と呼ばれる緩衝材が複数存在し、ここまで紹介してきた靭帯や筋肉が働くことで生じる、摩擦ストレスを軽減する構造を持っています。ここまで読んでみると、改めて肩関節は股関節と同様に安定性と可動性を高いレベルで両立する必要があることが理解できるかと思います。

ここからは追加の豆知識になりますが、脱臼と呼ばれるケガは約45%が肩関節で生じています。これだけを聞いても肩関節の構造は不安定な物であることが直感的に理解できるのではないかと思います。以上で非常に簡単ではありますが、肩関節の構造についての復習を終了とさせて頂き、ここまでの情報を基にして次の項目からは本題である、肩関節に効果的な運動を3つ紹介していきたいと思います。ぜひここまでの内容も何度か繰り返し読んで頂いて、運動を効果的に実践して頂ければと思います。

図2.肩関節の靭帯

<肩関節エクササイズ3選>

 それでは本題である肩関節に効くピラティスエクササイズを3つ紹介させて頂き、どのような効果が期待できるのかについても併せて解説を進めていこうと思います。冒頭の繰り返しになりますが、くれぐれも現在すでに肩関節の痛みが強い方などは無理して運動を実践しないように注意してください。今回、紹介させて頂くエクササイズは①on elbow side plank②star③push upの3つになります。では以下から1つずつ深掘りしていこうと思います。

 初めに紹介させて頂くエクササイズはon elbow side plankというエクササイズになります。この運動で特に狙っている部分は、前鋸筋と外腹斜筋になります。まず前鋸筋についてですが、バックナンバーである”肩こりと前鋸筋の関係について”で前鋸筋の機能を深掘りしていますので、こちらの記事では簡単に機能を説明させて頂きます。前鋸筋で重要なポイントは、肩甲胸郭関節の機能を改善することになります。

 肩甲胸郭関節が機能的に働けない状態になっていると、肩甲骨の可動性は低下しそれに伴って肩甲上腕関節の位置も適切な位置を取ることが出来ずに、肩関節の痛みや筋出力の低下など様々な不調に繋がってしまいます。エクササイズとしては図3にあるような姿勢を取ることで、前鋸筋を刺激し筋連結を持っている外腹斜筋を初めとした体幹筋群にも刺激を入れる事ができるため、非常に優秀なエクササイズと言えます。

特に外腹斜筋については、肋骨を内旋方向へ誘導する機能も有しており肩関節だけでなく呼吸機能の改善も狙うことが出来るため、一石二鳥の運動となります。このエクササイズは側臥位(いわゆる、横向きです)で実践することになるため、バランスを取るだけでも難易度が高く、上手く実践出来ない方も多いので痛みと相談して何度か挑戦することをオススメします。

図3.on elbow side plank

 

続いてstarというエクササイズをご紹介していきます。こちらのエクササイズで狙っている筋肉も先ほど紹介したエクササイズと同様になってしまいますが、前鋸筋と外腹斜筋が主な対象となります。先ほどのエクササイズと大きく違うのは、手のひらで自分の体重を支えた状態でキープするため、負荷量が高くなっていることが特徴です。もちろん負荷が高いということは難易度も同様に上がっているため、何度か繰り返し挑戦してみて下さい。

エクササイズの注意点としては、支えるポイントが手のひらになったことで手首に痛みを出してしまうことが現場では良く見られます。また、支える部分が小さくなったことで姿勢を保持できずに前後~左右方向へ身体を傾けてしまい、狙っている筋群への刺激が弱くなってしまうことも多いため、最初は鏡や壁の近くで実践して姿勢の変化に気付けるようにするのも良いかと思います。実はこのエクササイズを通してもう1つ刺激したい部分があります。それは、肩甲上腕関節に存在する”固有感覚受容器”も併せて狙っています。肩関節が股関節と類似している部分として、上記の固有感覚受容器が豊富だという特徴があります。このような固有感覚受容器を刺激するためには、分回し運動が効果的ということを、”股関節に効くピラティスエクササイズ3選”にも書かせて頂いたのですが、今回のエクササイズは体幹に生じる動揺を逐一制動することによって受容器を刺激することが可能となります。

図4.star

最後はpush upというエクササイズをご紹介していきます。こちらのエクササイズは皆さんも1度は実践したことがあるのではないかと思います。このエクササイズで狙っている筋肉は前鋸筋と上腕三頭筋になります。前鋸筋の重要性は先ほどまでの項目でも説明しているので省略させて頂きますが、上腕三頭筋も非常に大切な筋肉になります。

上腕三頭筋が機能すると肩甲骨の前傾を後傾方向へ誘導する作用が働き、肩甲上腕関節が前方へ突出しないように位置を調整することが出来るようになります。特に図1と2を見てみると、肩関節は前方へ弱い構造となっているため上腕三頭筋が機能出来るようになることも重要なのです。

エクササイズの注意点として、上記の筋肉に記載していませんが腹筋群にも刺激が入ります。そして腹筋群の収縮機能が不足していると、反り腰で動作を実践してしまい腰の痛みを引き起こしてしまうことがあります。逆にこの運動を適切に実践できる人にはぜひ試してみて欲しいのですが、エラー動作である反り腰でこのエクササイズを1度行ってみて下さい。まず間違いなく動作の負担感が増大(上手くプッシュ出来ないと感じる)するはずです。このような感覚を掴めると、肩関節~腹筋群まで動作における繋がりがあることも改めて実感する良い機会になると思います。

そのためこのエクササイズを行う前に、腹筋群の機能を向上しておく方がより安全にエクササイズを実践出来ます。腹筋群を選択的に賦活するような運動は、バックナンバーの「ピラティスにおけるティーザーとは」や「ピラティスにおけるテーブルトップポジションとは」の内容が参考になるかと思いますので、ぜひ後ほどご一読して頂きpush upを安全かつ上手に行うための準備として頂けると幸いです。

図5.push up

<まとめ>

 以上で肩関節に効くピラティスエクササイズ3選の解説を終了したいと思います。紹介させて頂いた運動はどれも非常に優秀なエクササイズであることが、記事を読み進める中で何となくでも理解出来たのではないかなと思います。最初から上手くエクササイズが全て実践出来る方は私の経験上、見たことがありませんので地道に1つ1つご自宅でやってみて徐々に運動が出来るようになれば幸いです。

もちろん今回紹介させて頂いた運動以外にも肩関節に効果的な運動はありますが、難易度も含めるとまずは、上記3つの中から開始してさらに難しいエクササイズへ挑戦していくのも良いのではないかと考えています。構造から運動まで内容も膨大になってしまいましたが、何度も繰り返し読みながら、今回の記事が肩関節への理解を深めて頂く1つの手助けになれば幸いです。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。

 

Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

 

参考引用文献

1)坂井 建夫,松村 讓兒:プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系第3版:医学書院:pp.264-266,305.:2022年.