「身体を整えて」から「動く」ことで「コンディショング、ライブパフォーマンス」を高め、快適な毎日を過ごせるように、セッション(手技×マシンピラティス)をご提供しています。

 

・本記事から得られるもの、理解できる事

〇「ピラティス」について理解が深まる

 

〇「日常生活への繋がり」について理解できる

 

それでは、さっそく解説していきます!

 今回は「マシンピラティスとマットピラティスの違いについて」という記事の最終章として、日常生活への繋がりを中心に改めて深掘りしていこうと思います。今回の記事は前提として、関連記事2つを読んだ状態を想定して書き進めていますので、まだ関連記事に目を通していない方は一度対象の記事を読んだ上で、もう一度この記事に戻ってきて頂ければ幸いです。

今回の内容は一部論文も使いながら解説をさせて頂きましたが、個人的な見解も多分に含んでいますので、1つの参考程度に読んで頂ければと思います。ですが結論として、最終的にはピラティスのみならず、日常生活への繋がりを考えた”複合的な運動”を実践することが今まで培ってきた運動学習の効果を最大限に生かし、身体の悩みを解決する重要なピースになると考えています。

それではさっそく次の項目から、運動学習の弱点について解説をさせて頂き、その弱点を補うためにはピラティス以外に何が必要なのかという部分を日常生活への繋がりという観点から解説していきたいと思います。

 

<運動学習の弱点?>

 まず初めに運動学習の弱点について解説させて頂こうと思います。運動学習の詳細については、関連記事である「マシンピラティスと・・・~運動学習を中心に~」という副題の付いた記事を読んで頂ければと思いますが、簡単に説明すると運動学習とは比較的永続的な変化を導く練習や経験に関連した一連の過程を指すということでした。そしてその一連の過程を得るためには、保持・転移という2つが重要であることを解説しています。

 今回の記事では万能に見えた運動学習の弱点に目を向けて頂こうと思っています。まず前回までの記事を読んで頂いた皆様であれば、ぼんやりとピラティスを通して得られた運動学習の弱点が見えているかと思います。それは「ピラティスエクササイズが本当に日常生活へ転移するのか?」という観点になります。

 運動学習の転移についても詳細は先ほど紹介した記事を読み込んで頂ければと思いますが、簡潔に説明するとAという運動を実践して得られた経験がBという類似性の高い運動に影響を与えるといった現象が転移と呼ばれる物でした。ここで最初の疑問である「ピラティスエクササイズが本当に日常生活へ転移するのか?」についてですが、今回この記事を書くためにいくつかの論文を読み込み、その内容を組み合わせて考えてみたところ”純粋に転移する局面は存在しない”と個人的には考えています。

その理由として大きな物が2つ存在します。まず第1として”ピラティスエクササイズはマシンが変わるだけで運動学習効果が得られる設計になっている”という点です。これは関連記事の中でも一例として説明しましたが、マット→マシンへ場面が変わるだけで同じエクササイズでも上手く出来ないことが多いという実体験も併せて解説しています。これがメリットとして利用できているうちは全く問題無いのですが、図1にあるピラティスエクササイズのフットワークを例にしてデメリットの部分を考えてみましょう。
 
 

図1.フットワークエクササイズ(写真協力:施設代表の山下)

 図1のようなフットワークエクササイズは下腿三頭筋のストレッチ・活性どちらにも利用できる非常に優秀な足関節エクササイズの1つですが、日常生活の場面ではどうでしょうか。このように仰向けで足関節を限界まで底屈~背屈(足首を前に倒す・後ろに起こす)する場面が存在するでしょうか。少なくとも私は日常生活を送る上で、上記エクササイズと同じ場面に出会ったことはありません。

つまりピラティスエクササイズの弱点として、日常生活とかけ離れた動作を行うため日常生活へ即座に転移すると言った状況は見込めないというのが個人的な結論になります。これはピラティスを通して健康になろうと言う私たちにとって致命的なデメリットになります。

そしてもう1つの大きな要素として”日常生活では場面/環境に合わせて動作を選択する必要がある”という点です。これだけでは非常に抽象的な表現になってしまうため、徐々に深掘りしていきたいと思います。

例えば日常生活で良くある場面として「喉が渇いたから、冷蔵庫に飲み物を取りに行こう」という状況があったとします。この状況における最終目標は”喉の渇きを潤すこと”であり、途中の手順はどのような方法で実施しても構わないということが想像出来るかと思います。さらに場面を理解しやすいように、上記の一例に対して2つ条件を追加してみましょう。①自分がいまソファーに座っているor地面に座っている②冷蔵庫の前でペットが陣取っているという条件が加わったとします。

①の場面について考えてみるとソファーからの立ち上がりと地面からの立ち上がりでは、身体の使い方がかなり違うことが記事を読んでいる皆さんも想像できるのではないでしょうか。さらに②の場面が加わると、「いま冷蔵庫を開けると、ペットにお菓子を要求されそうだな・・・」「ひとまず水道水を飲んで、一服しよう」など別の方法で”喉の渇きを潤す”という最終目標を達成することも想像できるのではないでしょうか。

このように日常生活への転移を考えた時に重要なのは”正解が1つではない”ということです。特に①の地面から立ち上がることを深掘りしてみると、日によって手を着いて右側/左側から立ち上がってみたり、気分が良かったから手を使わず跳ねるように立ち上がってみたりフォームがまるで違うという状態が当たり前に起こります。

ここまで読んで頂くと最初に挙げた”純粋に転移する局面は存在しない”ということも、一定の理解が得られたのではないかと思います。そうすると次の疑問として「じゃあなんでピラティスを行うの?」「最終的に結局どうすれば良いの?」という疑問が湧いてきたと思います。これについては次の項目の、ピラティスの弱点を補うためにという所で疑問を解消できるレベルまで深掘りしていきたいと思います。

 

<ピラティスの弱点を補うために>

 それでは本日、最後の項目になりますがピラティスの弱点を補うためには何が必要なのか解説を進めていこうと思います。まず先ほどの項目で生じた「じゃあなんでピラティスを行うのか?」「最終的に結局どうすれば良いの?」という疑問を1つ1つ解消していきましょう。実はその疑問に関しては、今まで紹介している関連記事の解説内容にもヒントがあります。

今回の記事では改めてピラティスの特徴/特性を一言で理解できるように、”ピラティスは運動の材料を増やすことに向いている”という側面について深掘りしていきたいと思います。この内容が理解できればピラティスで出来る事~何が苦手なのかについても自ずと見えてくるかと思いますので、何度か内容を読みなおして頂いて徐々に理解を深めて頂ければと思います。

 前置きが長くなってしまいましたが、ピラティスで運動の材料を増やすという考え方について解説を進めていきましょう。改めてピラティスが得意とする領域を整理すると、マシン/マットなど様々な環境でエクササイズを実践することで、筋肉を初めとした固有感覚受容器(体性感覚、前庭覚、視覚など)を刺激して、自分の身体を思った通りに制御できるようになるという現象を効率よく引き起こせるということでした。

 上記内容をかみ砕いた表現にするのであれば、運動の材料(fundamental)を増やすという言葉が個人的には非常にしっくりくる表現になります。今回の記事では日常生活へ繋げることを中心に考えているので、そちらとも絡めていきましょう。先ほどの項目でフットワークエクササイズについて解説をさせて頂き、その流れで日常生活を送る上ではそこまで大きな足首の可動域は使われない事を併せて説明させて頂きました。

 ですが可動域を大きく動かすことが無い=その能力が必要無いという意味ではありません。むしろピラティスを通して運動の材料である足首の可動性+筋力が担保されると、日常生活を送る上で選択肢を増やす/身体の負担を減らすことに繋がります。例えば、全力で背伸びをして手が届く所に食器を片付けていたとします。この食器を毎食決まって使う必要があると考えたらどうでしょうか。1週間もすれば全身筋肉痛になっていてもおかしくないですよね。

 このような状態を解決するためにはピラティスを通して、足首の可動性と筋力の向上を図ることによって、動作にかかる労力が少なくなり最終的に食器を取る作業が楽になると考えられます。ですが運動の材料が増える=そのまま日常生活へ繋がらないことは皆さんも理解できていると思います。つまり運動の材料が増える→材料を適切に使う方法を学ぶという段階を踏むことで、日常生活に動作が昇華されるのです。

 つまりピラティスで運動の材料を増やした上で日常生活に近い動作を学習するために、さらに多様な刺激を用いて運動を行う必要があるということになります。それでは続けて先ほどまで例に挙げていた足首を中心に考えていきましょう。

最初にフットワークエクササイズで足首の可動性+筋力を向上(fundamentalを確保)し、図2のようなアンクルレイズwithアクアボールプッシュや図3のリアクティブカーフレイズを実践することで、足首~膝にかけて予測できない刺激/反射的な運動を取り入れることで、凹凸のある地面に適応する能力や段差から降りた際にかかる負荷をどう受け止めるのかと言った能力(日常生活への適応力)を鍛える事が出来ます。

図2.アンクルレイズwithアクアボールプッシュ

 

図3.リアクティブカーフレイズ

 

 いかがでしょうか。ここまでの解説を理解すると「ピラティスをやる理由ってなに?」「最終的に結局なにが必要なの?」と言う疑問がある程度まで解消できているのではないかと思います。今回の記事ではピラティス→日常生活への繋がりという点に重きを置いて解説を進めていきましたが、この部分に関しては私自身もまだまだ学んでいる所も多いため自分の中で新たな発見があった際には改訂版として、記事を更新できればと思っています。

 今回も非常に長い記事になりましたが、いかに簡単なまとめを乗せていますので是非そちらもご一読して頂ければと思います。それではいったん失礼いたします。

<まとめ>

 今回の記事も非常に長くなってしまいましたが、以上でマシンピラティスとマットピラティスの違いについて~日常生活への繋がりを中心に~の解説を終了とさせて頂きます。ここまで読んで頂いた皆様であれば、ピラティスで得られる効果の本質そして日常生活へどうすれば転移が得られるのかという、非常に大きな部分が理解できたのではないかと思います。

 記事の中では運動の材料を増やすという表現を使いましたが、別の表現方法としてピラティスは「身体を使うための言語や文法を学ぶ場」であり、それを日常生活という「実際の会話」に落とし込んでいくという表現も理解しやすいのではないかと思いますので、記事を読んでいる皆様にはどちらか一方でも、気に入った表現を覚えて頂ければ幸いです。

今回の記事を読んで「ピラティスも良いけど、他の運動も重要なんだな・・・」と感じられた方は是非お気軽に当施設へお越し頂き、日常生活への繋がりに必要な運動を少しでも実感して頂ければと思います。

改めましてこの記事が少しでも皆様のマシン/マットピラティスが持つ効果を理解することに繋がり、その上でピラティス以外の運動を始めるきっかけになればと思っています。最後まで読んで頂きありがとうございました。それでは失礼いたします。

 

 Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

 

参考引用文献

1) Stanisław H Czyż , Aleksandra M Wójcik et al.: The effect of contextual interference on transfer in motor learning – a systematic review and meta-analysis.: Front Psychol.: 2024 Aug14.

2)Rebecca M Bollinger, Mlissa J Krauss et al.: Rehabilitation Transition Program to Improve Community Participation Among Stroke Survivors.: JAMA NetwOpen.: 2024 Oct7.

3)James H. Rimmer.: Getting Beyond the Plateau: Bridging the Gap Between Rehabilitation and Community-Based Exercise.: PM&R.: volume 4, Issue 11.: November 2012.: 857-861.

4)Ross A Pinder, Keish Davids et al.: Representative learning design and functionality of research and practice in sport.: J Sport Exerc Psychol.: 2011 Feb.